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パワースポット&山上グルメ編(青梅市)

誰もが無料でうけられる授業。興味、関心のおもむくままに気軽に参加できるのがうれしい。 授業に参加することで、知らなかった人、知らなかったこと、知らなかった場所に出会える。そんな喜びがあるはずです。

これまでの授業レポート

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2015年9月12日 (土)
御岳山の暮らし・歴史・文化を知る山歩きツアー
パワースポット&山上グルメ編(青梅市)

日時
2015年9月12日(土)9:20 - 14:30
教室
御岳山
所在地
東京都青梅市御岳山マップ
定員
12名(抽選)
授業料
無料(ただし、昼食の御師料理代 2,000円 が必要)
協力
御岳ビジターセンター
先生
馬場 晃一
授業コーディネーター
伊藤 恵梨

■授業レポート

今回で三回目になる御岳山の授業、今年は「御岳山の暮らし・歴史・文化を知る山歩きツアー パワースポット&山上グルメ編」と題して9月12日土曜日に開催しました。数日前の豪雨や当日早朝の地震などで電車が遅れないかなど少し気を揉みましたが、ほぼ定刻に生徒さん13名とコーディネーターを含むスタッフ4名の総勢17名がJR青梅線御嶽駅に集合しました。

空は雲が多いものの青空も広がっている、そんな天気のせいか駅はリュックを背負った人たちで混雑しています。ここでの自己紹介は困難と判断し、先生と合流予定のケーブルカー御岳山駅に向かうことにします。駅前の停留所からバスに乗車、ケーブルカーの滝本駅に向かいます。車中では自己紹介前にもかかわらず、あちこちで生徒さん同士の会話が弾んでいます。今日の授業の期待の高さを示しているのかもしれません。

滝本駅バス停に着くと急な坂道を進みケーブルカー乗り場へ。いよいよ御岳の山中へという思いとともに、バスもケーブルカーもIC乗車券が使えるところが、やはりここは東京都だと思ったりもします。ケーブルカーに乗り込むとおよそ6分で御岳山駅に到着、標高は831m、スカイツリーより高いということになります。改札を抜け、土産物店を過ぎた駅前の広場で馬場晃一先生と合流。コーディネーターより先生の紹介、本日の授業の内容と注意事項の説明、そして全員の自己紹介。それらが終わるといよいよ武蔵御嶽神社に向かって出発です、といっても道は舗装されているうえ建物が多く、ちょっと坂道が多い街中を歩いているといった感覚です。

少し進むと途中の急斜面を指差し「ここが畑です」と馬場先生。少しだけ平坦な部分があるものの、大部分が斜面で平地に住む私たちには畑には見えません。しかしここで、大根・ジャガイモ・などを作っているとのことでした。立っているだけでつらそうな急斜面での耕作、平地が少ない土地で暮らす苦労の一端を見た気がしました。

ムササビ用の巣箱を横目で見ながらコンクリートで舗装された山道を進むと「今年の五月に熊が出ました」と道路脇の藪を指差す馬場先生。そのときの状況を詳しく話してくれますが、ちょっと遠慮したい気分も。その話を聞いてから、藪を見るたびにそわそわした気分になりました。少し進むと昨年二月の大雪で道路が全部埋まってしまった話やその時の自衛隊の救援物資投下(ヘリから食料を落下させるため雪に埋まってしまい掘り出すのにひと苦労)のお話など聞きながら道を進みます。通り過ぎる原付バイクに乗った人が、馬場先生に手を挙げてあいさつをしてゆきます。御師(※)の集落では住人全員が顔なじみのようです。
※御師:神社に属し参拝の世話をする神職のひとたち、宿の世話などもおこなう。

やがて御岳山の総合案内所である、御岳ビジターセンターに到着、ここで小休止です。その間に館内に展示されている御岳山の案内図や動植物の紹介、イベント案内などを見学。すべて手作りでどこか人の暖かさを感じる仕様になっているのは、この施設が元小学校の分校を改装した建物だからかもしれません。

小休止を終え、センターを後にすると目の前に風格ある馬場家御師住宅が目に入ります。馬場先生の実家です。茅と杉板葺きの入り混じった入母屋の大きな屋根、広い玄関。鴨居の透かしや障子など細かい格子細工が目を惹きます。家の中に「御神前」とよばれる小さな社のようなものがあり、そこで拝んでも武蔵御嶽神社と同様のご利益があるとのこと。こちらのお宅も昔から「講」の代参(※)などで訪れた人たちが宿として利用し、お参りの手ほどきをするなどの接待をしています。この日は先生のお母様が特別に、抹茶と手作りのお菓子を用意してくださいました。淡い甘さの栗菓子と抹茶を堪能し馬場家を後にします。
※講:村落などで作られたグループで、同じ神社を信仰する人たちで構成される。
※代参:講の中から選ばれた数人の代表が信仰する神社などに参拝に訪れ、お祓いや祈祷をうける行為。

再び家々の間の少し急な坂道を登っていきます。左手には、火曜日と金曜日の午後に約30分間だけ開業する診療所が。簡単な診察や薬を渡すなど、時間限定で行っているとのこと。なんでもケーブルカーの時刻にリンクしているとか。体の具合が本当に悪くなれば、車を出して山を下り病院へ行くので、それで問題はないそうです。診療所を過ぎ急な坂道を上ると右手に樹齢千年を超える神代ケヤキの老木が、まるで老練な紳士が御岳山から下界を見下ろしているようにも見えます。神代ケヤキの坂を上がりきり右に折れると、土産物店が並ぶ鳥居前通り商店街、それを抜けるといよいよ武蔵御嶽神社の入り口、鳥居前広場へ続きます。

広場から山頂方向を見上げると、武蔵御嶽神社に続く長い階段があり、その登り口に手水舎があります、ここで先生より手水の作法を教わります。右手で柄杓を取る→水を入れる→左手に水を掛けて清める→柄杓を左手に持ち替える→同様に右手を清める→再び右手で柄杓を持つ→左手のひらに水を汲み口を清める→再び左手に水を掛け清める→最後に柄杓を立てて取手の部分に水を掛け清める(文章にするのは難しい)。手水台の下にはペット用の柄杓もあり、犬なども水をいただけるようになっています。御岳山は「おいぬさま」を祀っているということでペット、とりわけ犬連れの参拝者が目立ちます。御岳山側も受け入れに寛容なようです。お参り中の大型犬が動けなくなり、自動車に積んで下山させたなんてエピソードも伺いました。

階段を登り神社に向かいます。かつては仁王像があったという随身門、現在は右大臣・左大臣が鎮座しています。その先を左に曲がりさらに階段を登ります。階段両側のいたるところに「講碑(こうひ)」が立っています、刻まれている地名もさまざま。戸田(埼玉県)、大沼(小平市)、宇田川(渋谷区)、さらには千葉県や神奈川県の地名もありました。現在の住所よりも少し狭い範囲の地名を指す碑が目立ち、昔の「村」の単位をうかがうことができます。同時に御岳山と関東平野全域とのつながりの深さをあらためて感じることもできました。講碑以外にも、階段の手すりやベンチなどに寄贈した人名や地名が刻まれているのも目を惹きます。たまに階段の蹴上部分に「餓鬼」が刻まれていて、彼らが飛び出さないように踏みしめながら階段を上がります。碑に刻まれた文字を目で追い、餓鬼を踏みながら階段を上りきると、右手に武蔵御嶽神社が姿を現します。

小休止を兼ねて神社で10分ほどの自由時間、ご朱印を押してもらったりおみくじをひいたり、おいぬさまの護符を買う人も目立ちます。みなさん遠くに見える霞む東京の景色を見ながら千年を超える武蔵御嶽神社の歴史を楽しんでいたように思えます。再び拝殿前に集合。今度は裏手に回って、太占祭場(※)の横に立つ大口真神社、黒い外壁が金色に装飾され、どこか外国ブランドをほうふつさせる旧本院、なぜか徳川を示す葵の紋が入った皇御孫命社などを先生の解説を聞きながら見学してゆきます。
※太占祭:毎年一月三日に行われる神事。鹿の肩の骨を神社内で起こした火種で焼き、その際、骨に入ったヒビの長さで、あわ・ひえ・じゃがいもなど十数種類の作物のその年の出来高を10段階で占う。あわ十、ジャガイモ七・大根三、といった具合。数字が多いほど良作となるらしい。「たばこ」や「かいこ」などの記載もあり地域の特産に対応していた様子がうかがえる。結果はすべて太占表に記載され神社で販売されている。

ここで馬場先生よりお祓いの「は」「ら」「い」についてのひとつの解釈を教えていただきました。「は」は生まれる、「ら」は僕らの「ら」、「い」はいのちのことで、お祓いはけがれ(木枯れ)をはらい、こころの落ち込みや不安を救うということでした。 

続いて、今回のもう一つの魅力のスポットである「産安社」へ向かいます。登ってきた階段を再び「餓鬼」を踏みながら鳥居前広場まで一気に下山、山を下ることの身軽さなのか産安社の恋愛のご利益に少しでも早くあやかりたいのか、もしくはその後の御師料理に魅力を感じているのか、みなさんの足が少し早くなってきたような気がします。登ったときと少し違った道順で馬場家御師住宅裏まで下りました。山岳地に作られた家々は一軒ごとに宅盤(家の基礎となる高さ)が違い、どことなくエッシャーだまし絵みたいです。ビジターセンターの脇から山道に入ります。そこは先ほどクマが出た、という藪の上に当たります。

10分ほど山道を進むと産安社 の小さな社とともに、「夫婦杉」「安産杉」「子授け檜」が並んでいます。夫婦杉の間を通ると夫婦はより円満になり、未婚の方は良縁に恵まれるそうです。幾人かが真剣な面持ちで木の間を往復していました。再び山道を歩いてビジターセンター前へ。ここで馬場先生とお別れ、たくさんの楽しいお話やためになるお話をいただいたことに感謝し、心からお礼を述べさせていただきました。

さて最後のお楽しみ、御師料理をいただくために本日最速の足取りで馬場家御師住宅の先に立ち並ぶ宿坊のひとつ、藤本荘に向かいます。入り口に「東京にしがわ大学様」の看板がかかっているのがどこか嬉しい。靴を脱ぎ座敷に並んだ御膳の前に座っていきます。いろいろな段取りでスタッフとコーディネーターも少し忙しいが、授業も最後の食事を残すだけなので気が楽です。事前に連絡をしていたとはいえ、17名の訪問で藤本荘の女将さんを忙しくさせたかもしれません。 

お料理は野菜の煮物、刺身こんにゃく、山菜の天麩羅、ヤマメの姿焼き、栗ご飯など。どれも土地の素材を用いた料理ですが肉料理などもあり精進料理といったわけでもないようです。とてもおいしくいただきました。食後にアンケートの集計、食事代の集金、参加者全員で記念撮影と一気にこなし、藤本荘前で解散となりました。

おまけ
・武蔵御嶽神社狛犬コレクション!
武蔵御嶽神社では他ではなかなか見られない「おいぬさま」(ニホンオオカミ)の狛犬にも出会えます。御嶽神社拝殿脇のおいぬさまは頭が小さく足が長い八頭身。本殿脇のものは護符に描かれた、黒いおいぬさまに似てカッコイイ。ニホンオオカミを祀った大口真神社のおいぬさまは、少し現代的でアニメ風。 また変わった狛犬も。皇御孫命社のものは、いぬというよりもイノシシみたいで、土地の人から「ぶたこま」などと呼ばれているそうです。 皆さんも、御岳山に行かれた時はチェックしてみてください。
・その他

御嶽菅笠=江戸時代の御岳山の観光ガイドマップ。複写したものを神社で販売しています。 御嶽=高くそびえる山、御岳=広がりのある広大な山を意味するそうです。

レポート|松井信雄

■テーマ
御岳山の歴史、文化、暮らし、食を五感で味わおう

■対象者
・御岳山の歴史や文化、暮らしに興味がある方
・御岳山の農業や食文化に興味がある方
・にしがわ(多摩地域)の歴史や文化に興味がある方
・ビジネスマンとは違った仕事や暮らしに興味がある方
・地域のコミュニティや集落に興味がある方

■授業について
御岳山に行ったことはありますか?
子どもの頃からにしがわに住んでいる人は、遠足などで親しみがある場所かもしれません。
バスやケーブルカーも整備されているので、近頃は気軽に遊びに行ける山としても人気を集めています。

この授業は、そんな御岳山全体が教室です。
なかでも山上の暮らしや歴史・文化に注目します。

山上には江戸時代のはじめにできた17代以上続く御師集落があり、老若男女150名ほどが暮らす小さなコミュニティがあります。
先生には、御岳山の御師集落で生まれ育ち、929mの山頂にそびえる武蔵御嶽神社の御師として働く馬場さんを迎え、山歩きをしながら江戸時代に山上に集落ができた理由や山上での暮らし、にしがわと御岳山の深いつながりを学びます。

毎年恒例となった御岳山での授業。
3度目となる今回は、御岳山で随一のパワースポットとされる遥拝所と縁結びにもぴったりな産安社も巡ります。
山上グルメもさらに充実させ、昨年大人気だった御岳山の歴史や食文化が結集した御師料理のランチに加え、茅葺の家でお抹茶をいただく時間も設けました。

御岳山に行ったことがある人も、はじめての人もお待ちしています。

※御岳山の歴史や文化を紹介した「にしがわカルタ」の記事
2013年のツアーの様子
2014年のツアーの様子


■授業の流れ
09:20
JR青梅線【御嶽】駅前に集合・受付(受付終了09:36)
※08:57【青梅】駅発→09:18【御嶽】駅着(この電車が便利です)
東京にしがわ大学の説明と授業の説明、スタッフの紹介
09:40
バスで御岳登山鉄道【滝本】駅へ移動
10:00
御岳登山鉄道で【御岳山】駅へ移動
10:10
御岳山到着
先生の紹介と参加者の自己紹介
10:30
御岳山の山歩きスタート
・先生と一緒に山歩きをしながら御岳山に集落ができた歴史、御師と講、御岳山の暮らしなどを学ぶ
・じっくり見学スポット:御岳山の畑、馬場御師家住宅(茅葺の家でお抹茶を味わう)、御師集落、神代ケヤキ、商店街、鳥居前広場、階段の講碑
11:50
武蔵御嶽神社到着
・神社由緒やおいぬさま、太占についての説明を受けた後、参拝
・自由時間15分
12:30
産安社到着
・神社の由緒についての説明を受けた後、参拝
・恋に効く!?夫婦杉などに願掛け
13:00
宿坊で御師料理を楽しむ
・御師料理、御岳山の食についての紹介
14:30
授業終了・解散

■持ち物
動きやすい服装、歩きやすい靴、飲み物、筆記用具、タオル、帽子、折りたたみ傘など

■定員・締切
12名(抽選:8月29日締め切り)

■注意事項
※当日は昼食を除いて、屋外で歩きながらの授業となります
※雨天時は少し予定を変更して開催します(カッパがあると動きやすいです)
※電車の本数が少ないので時間に余裕を持ってお越しください。受付終了時刻を過ぎた場合は、各自でお越しいただきます(御嶽駅からバス、ケーブルカーで30分以上かかります)
※御嶽駅から御岳山までのバスやケーブルカーは一般の方に混じっての利用となります
※アクセスが悪い場所での授業になりますので、体調が悪くなった場合は早めにお知らせください

学生登録してからお申し込みください。
※最近HotmailやGmail等のフリーメールからお申込みいただいた方で参加のお知らせをお送りすると「迷惑メール」フォルダに自動的に入ってしまい、気づかずにご参加いただけなかった方が増えています。本授業をフリーのメールアドレスからお申し込みいただいた方はご注意ください。

先生プロフィール:
馬場 晃一(武蔵御嶽神社 御師、御岳ビジターセンター解説員)

1981年御岳山の御師の一家に生まれる。
2012年御岳ビジターセンターの職員となり、現在に至る。
解説員、及びに神主の勉強に日々励む。

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