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誰もが無料でうけられる授業。興味、関心のおもむくままに気軽に参加できるのがうれしい。 授業に参加することで、知らなかった人、知らなかったこと、知らなかった場所に出会える。そんな喜びがあるはずです。

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2013年7月 6日 (土)
御岳山の暮らし・歴史・文化を知る山歩きツアー(青梅市)

日時
2013年07月06日(土)10:15〜13:30
教室
御岳山
所在地
東京都青梅市御岳山
定員
15名(6月24日締切)
授業料
無料(但し、御岳山までの交通費、昼食代などは実費)
先生
片柳 茂生 馬場 晃一
協力
御岳ビジターセンター
授業コーディネーター
伊藤 恵梨

【授業レポート】
※授業の様子はFBアルバムにてご覧いただけます。

梅雨明け前で天気の心配をしていましたが、午前中は曇り。お昼ごろには晴れて暑いほどでした。この日、関東地方は梅雨明けしたそうです。
募集定員15名のところに数倍の応募が殺到し、厳正な抽選の結果当日参加したのは22名。バスとケーブルカーを乗り継いで御岳山へ。
ケーブルカーの車窓から見えた紫陽花がきれいでした。ケーブルカーを降りて、御岳平の広場に集合して先生・参加者の自己紹介。なんと参加者の中に片柳先生の中学時代の恩師がいたのには先生も驚いていました。
片柳先生が見せてくれた和綴じの冊子は「御嶽菅笠(みたけすげがさ)」。これは江戸時代に書かれた御岳山の紹介本、今で言う旅行ガイドです。絵がふんだんに入った木版刷り。バスも電車も無く、歩いて旅をしていた時代の新宿から御岳山までの道中案内。版木は今も残っているそうで、この冊子は神社の売店で購入できます。五七調の現代語訳もついています。
赤い鳥居をくぐり、山歩きスタート。山と言っても足元は舗装道路、住民の軽自動車も通ります。街灯や電柱、電線、参議院選挙のポスター掲示板もあり生活感が溢れています。視界が開けた場所からは市街地が展望できます。靄のかかった地平線にうっすらと立つ鉛筆のようなものは東京スカイツリー。スカイツリーより標高が高いところにいるのです。
途中、これから登る御岳山が見えました。山の上に見えるのが武蔵御嶽神社、少し下にある家々が御師集落。神社の屋根の近くに大木が2本、昔はたくさんあった杉の大木ですが、昭和42年の台風でほとんどがなぎ倒されたのだそうです。
片柳先生が立ち止まって説明を始めたのは、表参道との合流点。今回、私たちはケーブルカーで登って来ましたが、「御嶽菅笠」に載っているルートはこちらの表参道。青梅街道から御嶽神社へ続くルートは今も健在で、北参道、北御坂とも呼ばれています。この道の他に南御坂と呼ばれるルートもあるそうです。
室町時代から人が住むという御岳山の集落には、現在、30数軒の家に150人ほどが暮らしています。その多くは御師の家であり、他に土産物屋を営む世帯などが数軒あるそうです。江戸時代、御師の家は寺社奉行の管轄だったので町奉行は出入りができず、博打が盛んに行われていたそうです。
現在は集落を含む御岳山一帯も秩父多摩甲斐国立公園の一部に指定されており、自由に家を建てたり新しい住民が住むことは出来ません。入山できる車は通行許可証のある軽自動車だけです。
集落には現在、茅葺き屋根を持つ家が3軒残っています。そのうちのひとつ「馬場家御師住宅」は東京都の有形文化財に指定されています。屋根からは草が生え、放置されているようにも見えますが、現在も馬場先生の一家がここで暮らしています。良く見ると縞模様が見える屋根は、杉や檜の皮と茅を交互に重ねて葺かれており、その色から「虎葺き屋根」と呼ばれます。玄関の上に彫られている鶴の彫刻は火災除け。水に関係があるものは火事除けになるそうです。そのお陰か、この集落は火災に見舞われたことがなく、御師の家々には古くからの文献・資料、古文書が数多く残っているそうです。
馬場家の脇には井戸があるので、この家の屋号は「井戸端」。集落の家にはそれぞれ屋号があり、屋号で呼び合っています。
この集落唯一の診療所「青梅市委託御岳山診療所」の診療日は火曜日と金曜日、診療時間は午後2時25分から3時15分。週2回、50分間だけ開業する診療所です。時間が半端なのは、お医者さんがケーブルカーの時刻に合わせて通ってくるためです。

この集落で一番広い家は、みたけ山荘という宿坊で、屋号は「屋敷」。屋根は銅版葺きで、江戸時代には神主さんが住んでいた家だそうです。
神代ケヤキは、推定樹齢1000年の巨樹。太い幹にはたくさんのウロがあり、ムササビも住んでいます。倒れないように支柱で支えられています。国の天然記念物に指定されています。
お土産屋さんや飲食店の並ぶ賑やかな商店街を抜けると、鳥居前広場です。

鳥居前広場で片柳先生から説明。鳥居の外にあるお宮は「疱瘡神(ほうそうしん)」、病気の疱瘡をここで落としてからお参りするというもの。
楼門はその昔、神仏習合だった時代には2階建てで左右の門に仁王像が立っていたそうです。明治時代の神仏分離令・廃仏毀釈により、仁王像は撤去されました。手水舎の奥にある石碑は川合玉堂の筆による隧道の碑。
馬場先生から手水の作法の説明をうけ、手と口を清めました。
鳥居をくぐり階段を登って行きます。階段の両脇に沢山立っている石碑は各地から参拝に来る御嶽講の「講碑」。都内や関東近郊の地名が見受けられます。途中、右側にある小さな社は稲荷社です。
長い階段の途中、わき道と交差した場所で立ち止まり、銅の鳥居の説明を聞いていると、宅配業者の配送車が細い坂道を登ってきました。皆、通り過ぎるのをじっと見守り、そのハンドルさばきに「凄い!」と声があがりました。
銅で出来た鳥居は、いくつものパーツに分かれており、馬で運んできたそうです。途中で馬が死んでしまったので寸足らずになったとか。その馬は階段の脇に祀られているそうです。
長く続く階段の段のひとつの石に恐ろしい顔の鬼のような彫刻があったことに気付いた人はどれくらいいたでしょうか? 「餓鬼(がき)」です。踏みつけてしまいましょう。

階段を上り終えると神社前。ここで一旦解散、10分ほど自由散策・休憩。
開館中の宝物殿も見学できます。
まずはお参り。その後は自由にお札やお守りを購入したり、おみくじを引く参加者さんも。私もおみくじを引きましたが、凶でした。凶が転じて吉となってくれるように、境内の指定の場所に結んでおきました。
再び集合。片柳先生から武蔵御嶽神社についての説明。
拝殿は現在、東(東京都心方向)を向いて建てられていますが、これは徳川家康が江戸に来てからのこと。それ以前は鎌倉がある南を向いて建てられていたそうです。
武蔵御嶽神社は明治の神仏分離を経て、現在の形になりました。神社本庁には属していません。
本殿脇から奥にまわり、末社を見学します。大口真神社(おおくちまがみしゃ)は、おいぬさま。狼を祀ったお社です。奥には太占祭(ふとまにさい)の祭場があります。太占祭は毎年1月3日に行われ、雄鹿の肩の骨を焼いてひびの出来具合によって作物の出来を占う祭事で、関係者以外は立ち入り禁止。結果は一から十の数字で表され、結果表は100円で購入することができます。
武蔵御嶽神社では狛犬の代わりに狼の像がたくさんありますが、一対だけイノシシのような像ががあります。通称「ぶたこま」です。
末社を一通り見学。特別に社殿の中を見学させてもらえることになりました。順番を待つ間、神楽殿で休憩。ここでは第4日曜日の夜に神楽が奉納されます。一般公開もあります。太々神楽(だいだいかぐら)は神様に向かって舞うため、観客に背を向けることも多いそうです。
御嶽山の御師集落には、現在30数件に60〜70人の御師がいます。御岳山の御師は神主でもあるので、自前でお祭りができるそうです。
一般的には御師は山の麓に住んでいるので(大山などがその例)、山の上に暮らしているのは珍しいことだそうです。
漢字表記の「御嶽」と「御岳」には意味の違いがあり、使い分けています。それぞれの意味は「御嶽」は高くそびえる山。「御岳」は広大な山。日本各地に「御嶽」の名がついた山、神社があり、ここは「武州の御嶽」と呼ばれています。また、沖縄では「御嶽」と書いてウタキと読み、聖地、神聖な場所、という意味です。

社殿見学。社殿には明治時代に描かれたヤマトタケルの狼伝説の絵が飾ってあります。霧がかかり道に迷ったヤマトタケルの前に白い狼と黒い狼が現れ道案内をしたという伝説です。
本殿の前にはお供えが。酒、米、海のもの、葉物、山のもの、5種類がお供えされていました。これらは毎朝、御師たちが交代で持参してくるそうです。

社殿見学で授業終了。外に出てアンケート、社殿脇で恒例の集合写真撮影。解散。
アンケートの結果、授業のシリーズ化要望が多数。次回があるかもしれませんよ。

■テーマ
御岳山の歴史や文化、暮らしを知ることで、地域コミュニティや生き方を考える

■対象者
・御岳山の歴史や文化、暮らしに興味がある方
・にしがわ(多摩地域)の歴史や文化に興味がある方
・ビジネスマンとは違った仕事や暮らしに興味がある方
・地域のコミュニティや集落に興味がある方

■授業について
御岳山に行ったことはありますか?子どもの頃からにしがわに住んでいる人は、遠足などで行ったことがある人も多いかもしれません。最近はケーブルカーがあるので、登山をしたことがない人でも気軽に遊びに行ける山として、観光スポットとしても注目を集めています。
今回の授業は、そんな御岳山全体が教室です。なかでも山上の暮らしや歴史・文化に注目します。山上には江戸時代のはじめにできた17代以上続く御師集落があり、老若男女150名ほどが暮らす小さなコミュニティがあります。先生に御岳山の御師集落で生まれ育ち、929mの山頂にそびえる武蔵御嶽神社の御師として働く片柳さんと馬場さんを迎え、山歩きをしながら、江戸時代に山上に集落ができた理由や山上での暮らし、にしがわと御岳山の深いつながりを学びます。先生の御師という職業についてもお話いただくので、働き方や生き方を考える機会になるかもしれません。御岳山に行ったことがある人も、はじめての人もお待ちしています。

※御師(おし)とは、神社に関わる仕事のひとつを指します。詳しくは授業で解説します。

■授業の流れ

10:15
JR青梅線【御嶽】駅前に集合・受付(受付終了10:35)
※09:15【立川】駅発→10:09【御嶽】駅着
※09:35【立川】駅発→10:26【御嶽】駅着
10:35
バス乗り場に移動
10:40
バスで御岳登山鉄道【滝本】駅へ移動
11:00
御岳登山鉄道で【御岳山】駅へ移動
11:10
御岳山到着
御岳平で眺望を楽しんだ後、先生の自己紹介
11:20
御岳山の山歩きスタート
先生と一緒に山歩きをしながら御岳山に集落ができた歴史、御師と講、御岳山の暮らしなどを学ぶ
※じっくり見学スポット:馬場御師家住宅、御師集落、神代ケヤキ、商店街、鳥居前広場、階段の講碑
12:50
武蔵御嶽神社到着
神社由緒やおいぬさま、太占についての説明を受けた後、参拝。自由時間15分
13:20
鳥居前広場で質疑応答、御岳山の見所スポットを紹介
13:30
授業終了・解散
※ご自身でお帰りいただきます
※終了後は、各自で自由に昼食や山の散策を楽しんで下さい

■持ち物
動きやすい服装、歩きやすい靴、飲み物、筆記用具
※暑さ対策としてタオル、帽子、日焼け止めなど

■定員・締切
15名(6月24日締切。申込者多数の場合は抽選)

■注意事項
※電車の本数が少ないので時間に余裕を持ってお越しください。受付終了時刻を過ぎた場合は、各自でお越しいただきます(ただし、御嶽駅からバス、ケーブルカーで30分以上かかりますので、授業に間に合わない可能性もあります)
※御嶽駅から御岳山までのバスやケーブルカーは一般の方に混じっての利用となります
※当日は屋外での授業となりますので、暑さ対策を各自でしっかりしてきてください
※アクセスが悪い場所での授業になりますので、体調が悪くなった場合は早めにお知らせください
※学生登録してからお申し込みください。
※最近HotmailやGmail等のフリーメールからお申込みいただいた方で参加のお知らせをお送りすると「迷惑メール」フォルダに自動的に入ってしまい、気づかずにご参加いただけなかった方が増えています。本授業をフリーのメールアドレスからお申し込みいただいた方はご注意ください。

先生プロフィール:

片柳 茂生(武蔵御嶽神社 御師、御岳ビジターセンター解説員)

1957年御岳山の御師の長男として生まれる。
1979年御岳ビジターセンターの職員となり、現在に至る。
御岳ビジターセンターの解説員をしながら、神主の一人として武蔵御嶽神社に奉仕している。
朝日カルチャーセンターの篳篥講師。

先生プロフィール:
馬場 晃一(武蔵御嶽神社 御師、御岳ビジターセンター解説員)

1981年御岳山の御師の一家に生まれる。
2012年御岳ビジターセンターの職員となり、現在に至る。
解説員、及びに神主の勉強に日々励む。

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