調布には飛行場があり、30分飛んだその向こうには伊豆の島々がある。その玄関口は、伊豆諸島が味わえるまちでした。
調布飛行場
- 飛行機から降りてくる人たち@調布飛行場
「飛行場を使うと、東京都の島までほんの数十分ですよ。」 昔、知り合いから教えてもらい、自分の住むまちから知り合いのいる島がこんなにも近いのかと驚いたことがあります。調布飛行場は、毎日3〜4便、伊豆諸島への定期便が就航し、ここ調布は島へと続く玄関口になっています。実は今、この飛行場は、島民や旅行客の人を運んでいるだけではなく、島でとれる食材たちも運んでいるのです。島の新鮮な魚や、採れたて野菜が届けられ、市内のさまざまな飲食店で食べることができます。
遠いようで実は近いにしがわと島、学生時代から幾度も通った島とのつながりを感じたくて、この「食」を通じた両者をつなぐ活動をされている調布アイランドさんを訪ねてきました。
朝獲れ鮮魚と、新鮮野菜
- 調布卸売センターには東京の島の食材コーナーがあります。
午前11時20分、飛行場に島からの第一便が到着しました。続々と降りてくる人たち、その後ろから台車に載せられたたくさんの発砲スチロールが届きました。三宅島、新島、式根島、大島から今朝獲れたばかりの魚と新鮮な野菜の到着です。今日は特に大漁のようで、全部で10箱分、約60kgのお魚が届きました。
『わあ?本当に届いてる!』と私。改めて島との距離の近さを感じます。冬に入り西風が強くなる島々ですが、12月まで漁は続き、キンメなどは一年中獲れます。初夏から秋にかけては新島と三宅島の定置網漁で、サバやアジなどが獲れるそうです。この食材たちを、調布アイランドさんでは、その日のうちに加盟店へとお届けします。飛行機を活用するからこそ、足が早くてこれまで加工なしには流通できなかった青魚たちがお刺身でも食べられるようになりました。
現在は、調布だけでなく、八王子、日野、府中、三鷹、国立のお店にも納品しているそうで、私は代表の丸田さんの車に乗り込み、お届けに出発したのです。
調布に海を
- 雀のお宿で丸田さん(左)と店員の御林さん(右)
- 牧クッキングサロンの牧先生(左)と2ショット。牧先生は明日葉をミキサーにかけてジュースにして飲んでいるそう。
配達の道中、代表の丸田さんは『お客さんとコミュニケーションをとれるのが楽しい。』とお話してくれました。"ただ運ぶだけじゃない、気持ちを届けること" もともと旅行会社に勤めていた丸田さん、定年退職後に、市内のイベントでコミュニティビジネスというやり方を知ったことがきっかけで、改めて調布の魅力=飛行場に注目したそうです。これまで誰も気づかなかった空輸という島からの流通経路を発見し、各島の漁協や船長たちと交渉をしながら、流通路を拡げていきました。コミニュニケーションを続けている丸田さんだからこそ、食材の魅力も、島の魅力もきちんとお客さんに伝えたいという想いが伝わってきました。
車は三鷹から調布へと順番に加盟店を回ります。 調布深大寺は何件もの蕎麦屋が軒を連ねていますが、実はここにも島の食材が届けられています。 「雀のお宿」は、参道沿いの山内にあるとても風情のあるお蕎麦屋さん。丸田さんの後ろを付いていき、店内へ入らせてもらって大島産の明日葉をお届けしました。こちらではお蕎麦と一緒に明日葉の天ぷらを出したり、夏には新島産のアメリカ芋の天ぷらも食べられるそうです。笑顔で迎えて下さったお宿の御林さんは、実際に新島まで行き食材を見て回ったそうです。食材の繋がりから、にしがわの人と島の人との交流も生まれていることを知りました。深大寺そばと島野菜のコラボレーション!ぜひ食べにいきたいお店の一つとなりました。
深大寺参道の細い道を抜けていき、そのまま住宅街へと向かいます。お届け先は飲食店ばかりではなく、自宅で料理教室を開いている先生の元へも行きます。牧クッキングサロンさんへ明日葉をお届けです。先生の教室では、イクメンパパのための島魚のさばき方というイベントも行ったそうで、大変好評だったそうです。
海を越えた島とのつながりを考える。
- この日納品されたカツオとツムブリのお刺身盛り合わせ。(@大将日野店)もくもくと食べる私の前で、お酒を頂きながらもお店の大将に調理のアドバイスをする丸田さんはとても真剣な顔でした。
『名前は調布アイランドだけれども、多摩全体の話。多摩地域に来れば島のものが食べられる、いろんな人に来てほしい。』と丸田さんはお話してくれます。そして同時に、少しでも島のことを知ってもらい、行ってみたいと思うファンが増えていってほしいと言います。
"多摩も島も一緒に元気になれば良い"という想いで、調布が玄関口となり、食、文化、人、地域・・・多くのものがこれからもつながっていくことを強く感じました。つながった先にはどんなことが生まれるのでしょうか。 ぜひ、島が味わえる調布へ、そしてにしがわへ遊びにきてください。そして、伊豆の島々へと遊びにいってください。食はもちろん、その食を育てた島の魅力がたくさんあるはずです。
2016年12月30日|調布市
記者プロフィール
岸 加奈子
東大和市出身。学生時代に全国の島々を旅行し、伊豆諸島の新島でアルバイト生活&地域研究をするなど、島暮らしにあこがれる。自然がたくさんある自分の地元も好き。