どんな街にも、ふと散歩してみたくなる道があると思います。そんな中でも、私の住む街にある、とっておきの道のことを綴ります。
思い出の緑道
- 南側の入り口の大きな看板。なんとなく矢印の形をしてるから、こちら側から歩くのがよいのかな
あれは2014年の1月でした。にわ大の授業が終わり、武蔵境駅へと帰る途中のこと。授業を終えた生徒どうしで歩いて駅へ向かうときに、誰かが近道になりそうな小道を見つけたのです。住宅街のスキマにある小道。みんなで吸い込まれるように入っていきます。
かわいらしい緑道です。道の両脇を見ると、常緑樹でしょうか、冬でも緑鮮やかな木々があります。そして、ドッグランが広がる公園。フェンスの向こう側には農家さんの敷地でしょうか、畑が見えます。道のすぐ脇に立っている住宅、マンションもあります。
緑道を北から南へと歩いていったのですが、南の緑道の端には、「花の通学路」という名前の看板があります。どうやらここは、歩行者と自転車のみが通れるようです。「通学路」と聞くと、ランドセルを背負った小学生をイメージしますが、ランニングする人、サイクリングする人、犬の散歩をするおばちゃんにもすれ違いました。そういえば、にわ大も「大学」で、私達も学生だ。授業の帰り道、そんなシチュエーションだから、まさに通学路という名前がぴったりだったわけです。
それ以来、武蔵境近辺に用事があると、「あんな道があったなあ」とふと思い出すようになりました。
ただいま
- 6月の風景、色鮮やかなアジサイ。塀の向こう側に行きたくなる衝動にかられる
- 住宅が間近に迫る緑道
時が流れて、約2年。何かの縁でしょうか、私自身の環境が変わり、武蔵境に引っ越すことになりました。そして、新居に住んで間もなく気づきました。「この風景、見覚えがあるな。そうだ、あの緑道が近くにあるはずだ!」
とは言え、2年の月日は短いようで長く、緑道の場所をうまく思い出せません。緑道の名前すら忘れてしまっていたため、インターネットで調べることもままならず、本当にこの近くにあったのか、迷いながら見つからずに時間が経ってしまいます。
そんなある日の妻の一言でした。「そういえば、家の近くの住宅街の中に、小道の入り口があるよね」
あ、あの道のことだ! 次の日、近所をくまなく探しまして、やっと見つけました、「花の通学路」。南側の入り口には看板があるのですが、北側の入り口は住宅の合間にひっそりとしています。地図にも出ておらず、ついつい見過ごしてしまうかもしれません。
満を持して、吸いこまれるように道を進んでいきます。月日は経ったものの、当時の雰囲気は変わらず。両脇に木々、公園、マンション、畑。今回は初夏の色とりどりの花たち、特にアジサイが綺麗です。そして、あらためて歩いてみると、そんなに長い道ではありません。5分もあれば、端から端まで歩けます。短い道ではありますが、目線と同じ高さにあって距離が近い草花を見ると、とても気持ちがよいものです。
久々の再会。私は、引っ越してやってきた者ですが、お気に入りの緑道に向けて、「ただいま」と言いたくなる気分になりました。
身近な緑道
- 8月の風景、秋から冬の風景も楽しみです
「緑道」と呼ばれるものは、全国各地に多数あることと思います。例えば、武蔵境の近くにも、「狭山・境緑道」と呼ばれる緑道があり、井の頭通りの終点から埼玉県の所沢市まで20km以上続いています。
そんな中でも、私にとって「花の通学路」が魅力的なのは、それが住宅街の中に混在しているからです。緑豊かでありながら、近隣の住宅の風景も垣間見えるという、決して目立つわけではなくさりげなく存在する緑道に惹かれます。友達の家に招かれて庭を歩いているような、とても身近な感覚です。
「花の通学路」、今後は都市計画道路の整備により、削られてしまう可能性があります。いつまで今の形の緑道を保っていられるか、現時点ではわかりません。
でもまずは、カタいこと抜きにして、ぜひ「花の通学路」をお散歩してみませんか。たった5分の道のりです。歩いてみて、それから考えたって遅くはないではありませんか。
「ただいま」って言いたくなるかもしれませんよ。
2016年09月18日|武蔵野市
記者プロフィール
保坂 三仁
武蔵境こそが、東京のにしがわとひがしがわの境目だと思っています。