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手紙でにしがわの風景を贈る

観光名所などのイラストが施された消印「風景印」が押印された手紙を送ったことはありますか?ひょんなことから風景印に興味を持ち、全国にある郵便局の半数で使われていることを知った私。にしがわではどんな風景が図案になっているのでしょうか?風景印と元になった景色を訪ねる小旅行に出かけました。

にしがわで風景印ラリー!?


ある日、友人から届いた手紙に押されていた風景印。自分の地元や家の近くの景色が描かれたものも見てみたいと思い、インターネットで検索すると、出るわ出るわ。自分に身近な場所が描かれた風景印が見つかり、収集熱にスイッチが入った。

ポストに入れてしまうと普通の消印が押されてしまうので、風景印を押したければ、その印を所有する郵便局の窓口で直接お願いする必要がある。窓口が開いているのは、大都市の郵便局を除き平日だけなので、押印はなかなかハードルが高い。そのため、郵送で依頼する「郵頼」と呼ばれるサービスもあるほどだ。ただ、個人的な嗜好で集めるのならば、風景印に描かれた景色も実際に訪ねる「風景印ラリー」のようなことを企ててみたいと思った。

せっかくならば行ったことのない場所でラリーが出来るところはないか。少し調べると、すべての郵便局が風景印を有している市区町村もあると知った。にしがわでは、国立市、国分寺市、日野市、小平市、奥多摩町など。これはおもしろい! にしがわの中でも、"西"好きな私は、迷わず奥多摩町でのラリーを決行することにした。奥多摩町には4つの郵便局があるが、それぞれはかなり離れているため、バスを駆使してなんとか1日で回る算段を立てた。

風景印でめぐる奥多摩町 前編


看板も実物に忠実に描かれていている

当日は、早朝に家を出て奥多摩駅に向かった。到着後、すぐに日原鍾乳洞行きのバスに乗り込み、30分ほどバスに揺られ「東日原」バス停に。「日原簡易郵便局」はバス停のすぐ隣にあった。地元のコミュニティスペース「日原生活館」内に入っている、とても小さな郵便局だ。

風景印をもらいにきた旨を伝えると、慣れた手つきで「どこに押しましょうか」と尋ねられた。風景印はただのスタンプとは違うので、切手がないところには押してもらえず、ハガキを買うか、切手を買って台紙などに貼り付けたうえで押してもらう必要がある。私は、ハガキに押して集めていこうと決めていたので、その場でハガキを購入してお願いした。

すると「押印の位置は切手の右端で良いですか」と聞かれ、押印位置にもこだわって集めている人がたくさんいるんだろうなと想像した。

"押したてほやほや"の風景印(その場で持ち帰るということも、なんだか不思議な光景だ)とともに、図案の解説などか書かれた「風景印の栞」をもらった。

欄干や街灯は細部まで表現されていて圧巻

栞によると、描かれているものは、1250年前に発見されて以来、山岳修験の場として賑わった日原鍾乳洞入り口と、鍾乳洞内の金剛杖(修験者が携えた金剛杖と似ているため名付けらた石筍)で、平成元年11月1日から使用されている。

風景印に描かれた景色をこの目で確かめるべく、20分ほど歩いて日原鍾乳洞へ。入り口と鍾乳洞内にある金剛杖の実物を見学し、写真におさめた。

鍾乳洞の神秘に浸っている暇もなく、奥多摩駅に戻るバスへ。次の行き先は、奥多摩駅から日原川を渡った先にある「奥多摩郵便局」。ここでも先程と同様の手順で風景印をゲット。こちらの郵便局では、特に説明書などは渡していないということで、口頭で解説を受けた。

教わった通りに来た道を数分戻ると、風景印に描かれた奥氷川神社の三本杉、さらに先には氷川大橋が現れた。

どちらも行きに通ったところだが、知らずに通り過ぎていた。そういった場所と出会えるのも風景印集めの良さだと改めて実感した。

風景印でめぐる奥多摩町 後編


手書きの看板がかわいらしい小河内郵便局

続いて、奥多摩湖畔にある「小河内郵便局」へ。初めて見る奥多摩湖に少し興奮しながら、湖の中腹にある「日村沢」バス停で下車。目当ての郵便局は目の前にあった。

風景印を押してもらい、壁に掲示された説明書きを案内された。昭和33年からの使用で、まさしく「奥多摩湖を描いたもの」とあった。東西に長い奥多摩湖、風景印と同じ風景を探すのは断念し、郵便局のそばからの眺めをおさえた。

奥多摩駅に戻り、青梅線の上りに乗り込んで最終目的地の古里駅へ。駅から数分の「古里郵便局」の前にはお地蔵さんも。こちらでは、風景印とともに図案解説もいただいた。昭和29年8月1日から使用で「多摩川の清流をへだてて 奥多摩の連山を望む」と書かれている。

郵便局を出て、図案通りの多摩川と奥多摩の連山を望むのにぴったりな万世橋から、最後の一枚をパシャリ。

時計を見ると17時前で、朝から始まったこのラリーは小旅行にふさわしい行程となった。なんだかひと仕事終えた気分で、押してもらった風景印を見返しながら家路に着いた。

奥多摩町の4つの郵便局では、赤い丸型ポストも健在

風景印で地域の魅力を贈る


その土地の歴史や一番の見所が詰まった風景印。風景印に描かれた景色を実際に見に行けば、風景印にはおさまりきらない魅力を見つけることもできる。今まで行ったことがない場所で、風景印を集めながらまちを歩いてみたり、家のそばや旅先から風景印を押した手紙を出して、家族や友だちに風景を贈ってみてはどうだろうか。

2016年02月20日|奥多摩町

記者プロフィール

伊藤 恵梨
三重県の神道の家系に生まれる。大学入学時に上京し、御岳山と出会う。東京の山中で御師集落が営まれていることに感動して取材・研究活動を開始。七福神めぐり、御朱印集めなど、何かを収集?しながら地域と出会うことにも関心を寄せる。

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