にしがわのまちを歩いていると、必ずといっていいほど路線バス、コミュニティバスに出合います。ふと、このバス路線がどのようにつながり、広がっているのか気になり、路線バスだけでどこまで行けるか体験してみることにしました。
にしがわと路線バス
有志が制作、管理しているバス会社横断の路線図サイト「Bus Service Map」を見ると、にしがわの各市は網の目のようにバス路線が広がっていることが分かります。南北に鉄道駅間や鉄道駅と団地を結ぶ路線が多く、東西を結ぶ路線は都営バス最長で有名な梅70(花小金井駅北口?青梅車庫間)が目立つ程度です。
路線図を眺めてみて、路線バスだけでどこまで遠くに行けるのか体験してみたくなり、にしがわに広く路線網を広げている京王バスグループ(以降京王バス)の全線一日フリー乗車券(700円)を購入し、吉祥寺から八王子まで行ってみることにしました。
京王線と中央線を行ったり来たり(吉祥寺から聖蹟桜ヶ丘)
- 全線一日フリー乗車券と購入時にもらった路線図。バス車内でも購入できます。
- 吉祥寺駅南口のバス乗り場。将来は南口の再開発で駅前広場に集約される計画もあるそう。
- 貫井横丁入口の停留所付近。飲食店はこのうなぎ屋さん以外見当たらず...。
- 府中駅南口の再開発工事の様子。来年度末の完成を目指しているそうです。
出発はにしがわの東端の武蔵野市のターミナル吉祥寺駅です。吉祥寺駅のバス乗り場は数か所に分散しており、調布駅北口行きの吉14(系統)の乗り場は井の頭通り沿いにあります。この吉14は小田急バスとの共同運行となっており、京王バスの一日乗車券は京王バス担当便しか使えないことに注意です。
出発するとしばらくバスは井の頭公園を東西に分ける吉祥寺通りを通ります。この通りは吉祥寺と千歳烏山や仙川などを結ぶ路線バスがひっきりなしに行き来していて圧巻です。それにしても小田急沿線の駅を結ぶ路線はないのに行き来するバスは赤と白の小田急バスばかりなのはなぜなのでしょうか?
実は、小田急バスは1932(昭和7)年設立の武蔵野乗合自動車という会社だったことが影響しているようです。そして、前身の会社設立時の2路線の1つがこの調布と吉祥寺を結ぶ路線で、本社が吉祥寺に置かれた時期もあったそう。現在の本社は京王線沿線の仙川駅前にあります。そのような経緯もあって小田急沿線ではないけれども三鷹市、武蔵野市とその周辺に多くの路線があります。
ちなみに、京王バスは京王線と並行した路線を運行し、競合していた甲州街道乗合自動車がルーツにあたるようです。にしがわの路線バスのネットワークは鉄道会社によるバス会社の買収が影響しているようですね。
調布駅からは武蔵小金井駅へは武91で向かいます。この路線は野川公園などのレジャースポットを通ることもあり、休日でもそれなりの利用者がいました。運転免許試験場もあるので、受付日はもっと混んでいるのかもしれません。
さらに武蔵小金井駅からは武73で府中駅へ。途中「貫井横丁入口」という停留所がありました。吉祥寺のハモニカ横丁や新宿の思い出横丁のようなものを想像しましたが、周囲を眺めてもまったくの住宅街でした。
府中駅に到着し、南口の再開発工事の様子を眺めて国03で国立駅へ。北府中駅前の停留所は東芝前(北府中駅前)と鉄道駅名よりも会社名が正式名になっているのは、武蔵野線開通前から停留所があったからなのでしょうか。
国立駅周辺には小田急バスと似たデザインの立川バスが走っています。立川バスも小田急バスの前身の武蔵野乗合自動車と同様に戦後しばらくして小田急に買収されて同じグループになったことが影響しているようです。
駅前ロータリーをぐるりとまわり、聖蹟桜ヶ丘駅へ向かう国18に乗り込みます。この路線は大学通りを南下して甲州街道に出た後、中央道の国立府中インター付近の手前から野猿街道に入ります。多摩川にかかる府中四谷橋が個人的に気に入っていて、学生時代に国立駅北口に住んでいたときは橋を眺めに何度か行ったことを思い出しました。
多摩ニュータウンから八王子へ
- 南大沢駅前のバス乗り場。復刻塗装のバスが止まっています。
- 八王子駅南口のバス乗り場。
聖蹟桜ヶ丘でお昼を食べて、さらに路線バスの旅は続きます。
ここまでは中央線と京王線の駅を行き来する路線でしたが、今度は京王相模原線の南大沢駅に向かう桜80に乗ります。道路標識を見ていると同じ「ゆぎ」と読むのに地名は「柚木」、学校の名前などは「由木」となっているものがあります。かつてここ一体の村の名称が「由木」村で、地区の名称に下「柚木」があるということ以上の情報は見当たらず、気になるところです。しばらくして、ほどよい緑に囲まれた高層住宅街やビルが並んだ街が見えてくると、間もなく南大沢駅に到着します。
南大沢駅周辺はアウトレットモールや大学、シネマコンプレックスなど施設が充実しており、鉄道駅の乗降人数は京王八王子駅よりも多く、八王子市内の京王線・相模原線の駅の中でトップなんだとか。そもそも南大沢が八王子市だと知って驚いたことをふと思い出しました。
旅の最後は八60でJR八王子駅南口に向かいます。ニュータウンらしい風景から、しだいに農村地帯の風景に変わってきます。「野猿峠」や「多摩丘陵」といった停留所名からも想像できるとおり山を越えてきます。京王線の北野駅から八王子市街に入り、終点に到着。京王バスの路線網はさらに高尾山口駅までありますが、時間の兼ね合いでここまでとしました。
吉祥寺から八王子まで、JR中央線であれば30分ほどですが、路線バスを乗り継ぐと、途中一部寄り道をしながら約7時間。普段とは違った景色を楽しめ、また地域のことを知るよいきっかけになりました。みなさんも機会を見つけて路線バスを乗り継いで非日常を体験してみませんか?
2015年11月09日
記者プロフィール
藤岡 恭平
三鷹市在住。普段はバスにはほとんど乗りませんが、旅行で高速バスをよく使います。