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茶葉から学ぶ好きな味

食後の団欒や、ほっと一息つきたいというとき、お茶を淹れるという方は多いはず。そんなお茶をもっと親しむために、「東京にしがわ」からお茶の楽しみ方を伝えます。

升階茶寮に惹かれて


升階茶寮の店内は、数え切れないほどのねこグッズ、時計や蓄音器等々、山本さんが好きなものを好きなだけ集めた和洋折衷のインテリアで構成される。

JR八王子駅南口から南大通りを西に向かって5分ほど歩いたところに、一風変わったお店があることをご存知でしょうか。その名は「升階茶寮(しょうかいさりょう)」。静かでゆったりとした空間と、正装をばっちり決めた店主、山本哲也さんが来訪する方をおもてなしています。

そして、メニューを手渡されるのですが...ぶ、分厚い! 山本さんと飼い猫の面白い会話まである、まさに台本のようなメニューです。扱っているお茶は日本茶、和紅茶、中国茶、その他アレンジメニューを含めて100種類以上なのですが、全てのメニューにしっかり解説が付けてあります。食事や甘味のメニューには、それぞれオススメのお茶の組み合わせが記載されており、これは自宅に持ち帰って参考にしたいくらい。

今回は、東京狭山茶の「みずほ」をいただくことにしました。実は東京のにしがわも、江戸時代から茶産業が発達していた地域であり、瑞穂町を中心に栽培されている東京狭山茶、他にも国分寺茶などがあります。

升階茶寮では、同じ茶葉でも1煎目から3煎目まで、味の変化を楽しみながらいただくことができます。「みずほ」は、やさしい旨味とガツンとくる渋味を兼ね備えていて、1煎目から3煎目にかけて、旨味から渋味への移り変わりを楽しむことができました。

お茶って自由


中国茶を淹れる山本さん。お店では定期的に日本茶講座・中国茶講座を開催。講座でも、「こう淹れなさい」ではなく、「飲む人がどんな味を求めているか」をベースとした教え方に徹している。

山本さんには、「お茶の好みも淹れ方も、1つじゃない」という強い想いがあります。「みずほ」のようなボディの強い深蒸し煎茶もあれば、福岡の八女茶のように、渋味が控えめで甘味と旨味の強い「かぶせ茶」もあります。お茶には、中国茶や紅茶だってあり、それぞれに独特なお茶の特徴があるのです。これだけたくさんの種類があれば、お茶の好みは人それぞれのはずですよね。

お茶の淹れ方にもコレといった決まりはありません。もちろん一般的に「推奨される」淹れ方はありますが、それはあくまでも、「そのお茶の特徴が最も生かされる淹れ方」にすぎません。茶葉の種類が違えば淹れ方も変わりますし、同じ茶葉でもその日の気分によって淹れ方を変えて、違う味を出してみたってよいはずです。

山本さんは、「私にお茶のオススメを聞く際は、ぜひ好みの味や体調などを教えてください」と言います。私は、刺激の強いカレーを食べた後に伺ったことがあったのですが、そのときは「みずほ」に加えて、「煎茶エスプレッソ」をオススメしていただきました。「煎茶エスプレッソ」はまさにコーヒーのエスプレッソのように、湯の量に対して多めの茶葉で淹れた、しっかりと濃い凝縮された味。カレーの後味にも負けないお茶を楽しむことができました。

美味しいお茶を探しに


茶葉の種類はさまざま。見た目の形・色だけでも、それぞれに特徴があります。すべては覚えられなくても、自分が好きなお茶からちょっとずつ知っていけたらいいな。

あなたは、自分が淹れているお茶に満足しきれていないということはありませんか。そんなとき、まずは、「どんなお茶が飲みたいんだろう」と、じっくりイメージしてみてください。そして、あなたが飲みたい味がぼんやりとでも思い浮かんできたら、自宅にある茶葉のパッケージをひっくり返してみてください。飲んでいるお茶についてちょっとずつ調べながら、茶の種類・製法、そしてどんな淹れ方が自分に適しているかを考えてみましょう。やはり手っ取り早いのは、色んな種類の茶葉のお茶を飲んで、自分の舌との相性を確かめてみること。実際に飲んだお茶なら、その知識も頭に残りやすくなりますよね。

実際に升階茶寮で山本さんのお話を聞きながらお茶を飲み比べて、自分の好みを見つけ出せた方がいます。「玉露の美味しさもわかりますが、『自分が毎日定番のお茶として飲みたいのは、ボディがしっかりしたお茶だったんだ』ってよーくわかった!」とのこと。その方は東村山市出身だそうで、幼い頃から狭山のボディの強いお茶に親しんでいたことが影響しているのかもしれません。

東京にしがわのお茶はもちろん、もっと西の茶産地、日本では静岡、三重など、さらにアジア各国から、たくさんの種類のお茶が流通に乗ってやってきます。こんど西風が吹いてきたら、それは茶産地から届く、お茶日和のお知らせではないでしょうか。あなたが美味しいお茶に一歩近づく、大切な日であれたらいいな。

2014年09月04日|八王子市

記者プロフィール

保坂三仁
にわ大甘とう部したっぱ。東京の美味しさ・楽しさを求め、にしへひがしへ、ときにみなみへ奔走中。最近、料理と和室のインテリアに夢中すぎて、どうしよう。

写真

チコ
都内で地味に活動中のバンド「マニアック京都」のVo兼Gt。相模原市出身で八王子市内の大学に通っていた。写真が趣味で、さりげなく升階茶寮のお手洗いに作品を展示中。ご覧あれ。

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