• た
一覧に戻る

多摩地域の団地のいまむかし

多摩地域のまちを歩いていると、団地を見かけることが多いです。これらの団地にどんな成り立ちがあるのか、これからどうなっていくのかなど気になって、多摩地域と団地の関係について探ってみることにしました。


団地の写真を撮るため京王線つつじが丘駅から歩いて15分ほどの野川沿いにある神代団地に行きました。

団地いう言葉の由来はひとまとまりの土地を示す言葉(一団の土地)など諸説あるようです。今回は「公団の住宅地」の略称としての「団地」と多摩地域について紹介します。

団地の歴史のはじまりについては諸説あるようですが、戦後、海外からの引揚者などが一気に大都市に流入し住宅不足から「家(住宅)よこせ運動」がおこり、国の政策として大都市での住宅供給を行うために日本住宅公団(現在のUR都市再生機構)が1955年に設立されたことがはじまりと言えるでしょう。そして、1956年に大阪府堺市の金岡団地を皮切りに各地で団地がつくられます。

東京の郊外である多摩地域にも軍需工場の跡地や農地を開発してたくさんの団地がつくられました。大規模なものは町田市の町田木曽・町田山崎、調布市と狛江市にまたがる多摩川住宅(東京都住宅供給公社)、多摩市の諏訪・永山団地があり、分布をみると古くから宅地開発が進んでいた中央線沿線は少ないようです。東久留米市にあるひばりが丘団地は当時の皇太子・皇太子妃の視察で注目され、団地ブームの先駆けとも言われているようです。今となっては団地にはレトロなイメージがありますが、NHKのプロジェクトXでも取り上げられたダイニングキッチンなど、当時は人々のあこがれだったようです。


神代団地には個性的なカフェ手紙舎があり、にぎわっていました。

たくさんの団地がある多摩地域には、なんと団地に関する研究所があるんです。正式には都市再生機構の技術研究所と言います。もともとは高度成長期に大量の住宅建設に必要な技術開発を行うための量産試験場で、調布市国領から1969年に八王子市にある北八王子工業団地に移転したそうです。なお、工業団地自体は当時の日本住宅公団が手がけたものですが、研究所の近くにある集合住宅群は都営アパートです。

研究所には住宅設備だけでなく、建築材料や周知との環境の調和など団地に関するさまざまな切り口の研究施設があります。なかでも注目は集合住宅歴史館です。公団が手がけたものはもちろん、同潤会アパートなど代表的な団地、集合住宅の一部を移築、公開していて、当時の生活に想いを巡らせることができます。近代的なコンクリートづくりなのに浴槽が木製だったり、呼び鈴の電池が今では見かけないタイプのものだったり、細かいところにいろいろとビックリしてしまいました。また、多摩平団地の資料で八王子に昔競馬場があったことを初めて知るなど、地域の歴史も発見できました。

見学は、一般の人でも1人からできます。ただし、現在は平日の午後のみで事前に予約が必要です。普段見学する人は住宅関連の会社の人や自治体の建築関係の人、団地の住民の方、教育機関の先生、学生さんといった人たちが多いそうですが、アジアの国々からも自国での取り組みの参考にするため視察に訪れるのだとか。平日に休みが取れたらぜひどうぞ!


50年近く経っているので、木々がとても大きかったです

さらに、団地の魅力を探るべく国立富士見台団地にお住いの水島さんご一家におじゃましました。部屋に入るとすぐに目に入るのが本棚の団地に関する書籍たち。団地に興味を持つようになったのは植田実『集合住宅物語』(みすず書房)という本で、結婚前はその本に載っていた百草団地の階段状のセットバック住棟など都内のいろいろな団地を巡る「団地デート」をしていたんだとか。

そしてとうとう結婚を機に実際に団地で生活することに。最初から団地に住もうと考えていたわけではなかったそうですが、子供の遊び場や緑が多く、住棟の間隔に余裕があって風通しがよいこと、商店街が近いことなどから選んだそうです。

富士見台団地ではまだ自治会の回覧板が残っており、そのやり取りをなど通して同じ階段の人たちとの交流が生まれるようで、上の部屋のお子さんがいらっしゃる家族からたくさんの服のおさがりをもらうこともあったそう。他にも月1回、500円で参加できる「居酒屋きんぞう」や夏祭りなどイベントがいろいろあるみたいで気になります。

建設されてから40年以上建っているものの、その時々のライフスタイルにあわせたリフォームがされていて、中はそれほど古さは感じません。「団地の良さを生かしたリフォームで若い世代にもアピールして、団地が長く使われていくといいな」と水島さん。


取材や調査を通して外から見るだけでは分からない団地の変化を知り、気になるようになりました。次に引っ越す機会があれば団地も選択肢として考えたいです! みなさんもこの機会に週末は近くの団地を見に行ってみませんか?

2014年08月04日

藤岡恭平
三鷹市在住、武蔵野市在勤の会社員。団地には住んだことはありませんが、小さいころに親の勤め先の社宅に住んでいたことがあり、団地の風景に何となく懐かしさを感じます。

永松モトキ
羽村市在住、昭島市の企業に勤める会社員。にわ大では事務局長を務める傍ら趣味のカメラを活かし授業やイベントの撮影をしています。

一覧に戻る