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まちと暮らす西国図書室

西国分寺には、本好きな夫婦が始めた、本が旅する「西国図書室」があるらしい。どんな所? どうやって旅するの? 気になる気になる...という事で西国図書室の謎を解いていこうと思います。

旅のはじめかた


洋裁店当時の名残りが残っているアンティークな入口。

日曜日の昼下がり、大事な本を携えた人々が西国(にしこく)図書室へ集まり、自分の本を旅に出します。
旅のはじめかたはこうです。

  1. まず私の大事な本を西国図書室へ持っていきます。
  2. 会員登録を済ませ
  3. 私の持ってきた本に思い出を書き込み(本籍証)みんなの本棚へ。私の本が旅立ちました。
  4. みんなの本棚から誰かの大事な本を手に取ってみる。誰かの大事な本が私の所へ旅をしに来ます。

そうそう、本の後ろに「旅の記録...本のもちぬしへひとことをおねがいします」とあります。1-3年して、旅を終えたあと、私の大事な本がどこに旅をして、どのような思い出を作ったのか分かるようになっています。なるほど! 「旅する」ってこういう事か。

住み開き


階段室で絵本を読む室長の篠原靖弘さん。

でも、ここは自宅の一室。「なぜこのような図書室を始めようと思ったのだろう?」と疑問を感じ、西国図書室の室長 篠原靖弘さんにお話を聞きました。

篠原夫妻は結婚する前にシェアハウスで暮らしており、シェアハウスを2軒3軒と引っ越しする度、誰かがふつうにいる生活が当たり前になっていったとおっしゃいます。結婚して2人になった時「2人だとさみしい」と感じ、前に暮らしていたシェアハウスのように住み開きをしようと思ったそうです。"住み開き"とは家を何らかの方法でまちに開く住まい方です。

物件を探し始めた当時の篠原さんのfacebookノートにはこう書かれていました。

家探しをしている。夫婦二人で暮らす家。
でも、二人だけの家ではなく、ちょっとだけ町につながっている家に暮らしたい。
たとえば、駄菓子屋さんのような家だ。
店の奥の茶の間にいるおばちゃんに「よっちゃんいかちょうだい」と声掛ければ、「はいはい」と顔をだせる。
店舗付住宅ほどおおげさなものではなく、一坪でいいから、あけっぴろげにしておけば、町の空気が感じられる場所がある家。
その場で何が生まれるのかは、まだもやもやしていて、正直わからないのだけど、家って町とつながっていたほうがきっといい。

当初、住み開きはしたいが、図書室でなくても良かったそうです。ただ、本好きだった2人がそれぞれかなりの冊数の本を持っていました。洋裁店兼住居だった西国分寺の物件と出合った時、ここなら本が並べられるし、図書室をしようと思ったそうです。全ての事がたまたま偶然の出会いから始まったんですね。

西国図書室は自宅の一室という事もあり、とてもホッとできる空間です。ここでは本を読んだり、おしゃべりしたり、寝転んだり、人数がそろったらゲームもします。じっくり本を読みたい方には2階に上がる階段、通称「階段室」へご案内することもあるそうです。

本を手に取って、皆がすぐさまチェックするのが持ち主の思い出が詳しく書かれている「本籍証」です。思い出を知ってから本を読むと、読み終えた時に「...この本の持ち主はどんな人なのだろう?」と、本の持ち主に興味が湧いてきます。「よく手に取る本はいつも同じ持ち主の本だった!」という事もありますよ。もし本の持ち主が知り合いだったら、あの人にはこんな一面があるのか、と新しい魅力を発見できます。

このように、普通の図書館には無い楽しみがあります。西国図書室は、誰かの大事な本に出合う場所でもあり、誰かに出会う場所にもなっているようです。

まちと暮らす


みなさん、自宅のようにくつろいでいますね。

今ではカフェやパン屋さんに分室があり、公園では「絵本が読める日」というイベント等も開催しています。さらに7月から始まる「国分寺ブックタウンプロジェクト」という、本が人とまちをつなぐ「ブックタウン」について学び、考え、実践するワークショップも開催します。西国図書室は国分寺のまちと人とどんどん繋がっています。

篠原さんが以前おっしゃっていた「今では家がまちの物になっている」という言葉はとても印象的でした。

1人暮らしや夫婦2人では意外と近所の人と仲良くなるきっかけがありません。私も近所の人と仲良くしたいと思いつつ、でも話しかける勇気がありません。「誰かの大事な本を読みたい」「誰かに会いたいな」そんな理由で西国図書室へ行ってみると、「前に図書室でお会いしましたね」「この本の持ち主はあなただったの!」と近所に知り合いや友達が増えていきます。

西国図書室の住み開きを知って私が思う事は、近所に知り合いや友達が増えると自分のまちを好きになる!という事。 そして自分のまちを好きになるともっとまちと関わりたくなっていきます。

さて、次の日曜日は西国図書室へ行ってみましょう!
たまたま来ていた誰かから「ごはん作ったけど、うちに来る?」なんてうれしいお誘いがあるかもしれませんよ。

2014年07月24日|国分寺市

記者プロフィール

橋場美紀
横須賀市出身、現在は国立市矢川在住。国立の気取っていて田舎な、のんびりした雰囲気がお気に入り。おとなりの国分寺にも興味津津なのです。

写真

山田弘美
出版社勤務。にわ大に参加するようになって、さまざまな場所へ行き、たくさんの人と出会い、にしがわの魅力に気づきました。もっともっといろんなにしがわの人・もの・ことを知って、魅力を伝えたい!と思う日々。

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