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私のまちを好きになる

にしがわには、都心に出かけないで休日を過ごす人が割と多いんです。でも中には、住んでいるまちにあまり馴染みがないという人も結構いるみたいです。

自分のまちでの生活って楽しいですか?


震災以降は、地域の活動に参加したり、自分で活動をつくったりする人が増えたようです。身近なものに目が向いて、自分の地域での暮らしを豊かにしたい、近くの人とつながって安心して暮らしたい、という気持ちが高まったんでしょうね。何を隠そう、私もそんな1人です。いつもと違うことをやってみると、自分のまちが違って見えてくるかも。

実際に自分のまちで活動する 面白さって、どんなものなんでしょう。国立で小さな活動を始めて楽しんでいる人達がいると聞いて、会いに行ってきました。

活動を通して同じまちに仲間ができた


第11回の「オモニめし」での調理の様子。右端がようこさん。

調理した後は食卓を囲んでいただきます!左端が美緒さん。

公民館の廊下を進むと、にぎやかな声が聞こえてきます。扉を開けると、学校の調理実習のような楽しそうな光景。

「おかんめし。」は、子育てが落ち着いてきた「母親世代」と地域の大学生とが交流する、まちのプロジェクト。同じまちにいても接することがない一橋大学の学生と何か交流が持てないかということで、2013年1月に始まりました。「おかん」である、みやけようこさんと鴇田美緒さんが中心になって、毎月1回活動。家庭料理を一緒に作って食卓をわいわいと囲んでいます。

今日のメニューは、韓国家庭風「オモニめし」。チヂミ、もやしと小松菜のナムル、それからお肉と豆腐のキムチチゲ。チヂミを焼くフライパンから、ごま油のいい香りがしてきました。

「おかんめし。」をやっていて、どんな交流があるんでしょう。 おかんにとって学生は、今まで接点のなかった「まちの大学生」から、もっと身近な存在に変わったんだとか。食べることに共通の興味がある仲間みたいな感じです。

「火が強すぎたよ」
「今度はうまく焼けたね」
「やった、ひっくり返すのに成功!」

「みんなで買い出しに行って、一緒に作るからかな。あれこれ言いながら、協力して料理している間になんとなく仲良くなれるんです。それに、食べる時ってみんな心をひらくでしょ。自分のことを話しやすいのよ」と、穏やかに話す美緒さん。

一橋大学商学部、清水ゼミと行われた「ゼミ de おかんめし」の様子

それから、まちの中に自分の子供が増えたような気持ちもするんだそう 。一汁三菜の"おうちご飯"が食べたいけど難しいという学生さんに、野菜たっぷりの料理を食べさせてあげたい。ひとりで作れるようになってほしい。自分のできることをして、喜んでくれるのが嬉しい。そんな想いがあるんですね。

学生にとっては、違う世代や仕事を持つ人達に触れて、普段の学生生活から視野を広げる新鮮な機会になっているよう。卒業 して国立を離れた学生はいるけれど、「おかんめし。」がこのまちを思い出したり立ち寄るきっかけになっているのだとも。学生時代のまちが懐かしくなったとき、会いに行ける人がいてくれるっていいですよね。

自分のまちへの愛着ってどこからくるんでしょう?


2014年4月に行われた一橋大学キャンパスでのお花見。「カフェここたの」とコラボ企画したお弁当を頂きました。

同じくお花見で。国立の旧駅舎をモデルにした三角屋根の屋台リヤカーをひいて、お弁当を運びました。のれんと木の番重(お弁当を乗せる箱のこと)はオリジナルで製作。

「おかんめし。」は12回目。口コミで少しずつ広がり、今は色々な世代の人が参加する場になっています。公民館から飛び出してまちなかで活動したり、国立の他の団体と一緒に企画をするようにもなりました。畑で農作業を手伝って葱焼きをして食べたり、地域のカフェとお花見弁当を企画販売したりと、楽しさはまちに広がっています。

「私ね、『おかんめし。』を始めてから、前よりずっと国立への愛着が出てきたんですよ」と振り返るようこさん。それは活動を通じて、住むまちに知り合いや仲間が増えたから。

知り合いのいない国立に引っ越して来てから「おかんめし。」を始めるまでの4年間は、自分はどこか「よそ者」という気がして、子供が成人したら離れようと思っていたのだとか。

でも、「今度参加しますよ」と声をかけられるようになって、待っていてくれる人がいる嬉しさから「国立を離れられないぞ」と。なんだかやる気が湧いてくるんだそうです。

それから、朝通勤途中で「おはよう!」って声をかけられることが本当に多くなった。なかなか駅まで、辿り着かないなんて時もあるけれど、楽しい時間なんだとも。そんな生活は、ちょっとうらやましいですね。

ようこさんは今、国立で一軒家を探しています。ここでの将来が見えてきたからです。 「おばあさんになってもずっとこのまちに住んで、この人たちと一緒にお茶ができたらいいな。『おかんめし。』を続けていって、"くにたちのおかん"になれたらいいな」と嬉しそう。

なるほど。人とのつながりができると、まちでの暮らしがいきいきするんですね。住む場所への親しみも、湧いてくる。「ここは自分のまちなんだ」って感覚がだんだん生まれて、愛着になっていく。言葉にすると、きっとそういうことなんですね。

新緑のまちを歩きながら・・・


自分のまちが好きになると、自然とそこを過ごしやすい場所にしたくなるもの。 美しい街並みを守りたい。いつもきれいに保ちたい。たくさんの人に見に来てもらいたい。 そんな想いで、まちってできてるんだな。 新緑でいつにもまして美しい大学通りを、そんなことを思いながら歩いたのでした。

2014年06月02日|国立市

参考

おかんめし。」・・・おかんと、学生と地域のみんながご飯を通じてつながるプロジェクト。市内で開催された地域講座「はたらく美術大学」から生まれました。毎月1度国立市公民館で定例会を開催。最後についている「。」は、ごはんつぶの意味もあるそう。

記者プロフィール

吉野佳
三鷹市在住。日々、中央線を行ったり来たり。国立文庫プロジェクトなど、地域の企画や執筆の活動中。にわ大では、asacocoで記事を担当。うどんが好き。

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