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のらぼう菜はおいしい

棚一面に並ぶ「のらぼう菜」
子生神社の「のらぼうまつり」の様子

週末に野菜を買いに五日市ファーマーズセンター愛菜に行ったら、のらぼう菜が棚一面に並んでいて、ビックリしました。

西多摩の伝統野菜


レジの方に聞いたら3月4月は端境期といって、冬野菜が終わり春野菜にはまだ早い作物の少ない時期。でも、のらぼう菜はちょうど旬なので、たくさんの農家が、のらぼう菜を出荷するとのこと。常連のお客さんの中には、ラベルを見てお気に入りの農家のものを選んで買う人もいるとか。

少し調べたら、のらぼう菜は西多摩地域で江戸時代から作られている伝統野菜で、毎年3月の最終日曜日には、あきる野市小中野にある子生神社で「のらぼうまつり」というお祭りも行われるということで、3月30日に行ってみました。

神社にテントがたくさん並んで、のらぼう菜の味噌汁や甘酒や焼きとうもろこしなど、大勢で準備をしていました。地元のお囃子がいくつも来ていたり、地場野菜や竹細工の販売をしていたり、とても賑やかな手作りのお祭りでした。

子生神社にある碑。上に大きく「野良坊菜之碑」と書いてあります。

この神社の裏には「野良坊菜之碑」という石碑があって、江戸時代に代官に命じられた名主が周辺の12村に種を配り栽培が始まったことや、天明・天保の飢饉の時にはのらぼう菜があったことで、人命の救助に役立ったことが刻まれています。

でも、元々は部屋の灯りに使う菜種油を採るために始めたんだけど、蓄えていた食料が少なくなり、新しい作物も乏しい端境期に、試しに食べてみたら美味しかった、という説もあるらしいです。新鮮な野菜のない時期に収穫できるのらぼう菜は、昔の人達にとってお腹を満たすだけでなく、貴重な栄養源でもあったのかもしれません。

名前の由来


のらぼう菜の名前の由来はいくつかあるんだけど、「野良にぼーと植わっているからのらぼうである」というのが個人的にはしっくりきます。

じつは、私もにわ大の畑サークル『土いじり隊』に参加していて、あきる野市の小庄の畑でのらぼう菜を2年連続で育てているんだけど、お隣の畑のおじさんに「のらぼう菜は畝の谷間に植えるんだよ」と教わりました。他の畑でも畑の端っこにぽつんと植わっている光景が見られます。

のらぼう菜は甘い

秋に植えられ寒い寒い冬を越したのらぼう菜は、甘みがあります。これは霜が降りると野菜の中の水分が凍らないように、光合成で作られた糖分を蓄えるからだそうです。水分の糖度が上がることで、氷点下になっても凍らないようになるんですね。寒さから身を守る仕組みがおいしさの理由なんです。

のらぼう菜の特徴は、茎の赤さ。おひたしやお味噌汁、炒めるなど何にでもあいます。

一方で菜の花やふきのとうなどの春野菜には苦味があって、冬の眠った身体を目覚めさせるというけど、のらぼう菜には苦味はありません。茎はアスパラガスのように甘く、葉には栄養がたっぷり含まれているので、両方食べられます。おひたしやゴマ和え、味噌汁に入れてもおいしいですし、炒めても食べられます。

のらぼう菜を食べてみてください

江戸時代からずっと西多摩で作り続けられてきて、すごく美味しい伝統野菜なんだけど、収穫後にしおれるのが早く、長距離の流通に向かなくてスーパーにはなかなか出廻らないらしいので、知名度の低さが残念なところです。

のらぼう菜の旬は4月半ばまでらしいので、早めにあきる野市の直売所に行ってみてください。美味しかったら、来年は一緒にのらぼうまつりに行きましょう。

2014年04月15日|あきる野市

記者プロフィール

浅見義孝
立川市在住在勤の3児の父。にわ大の部活動、地図を肴に酒が飲める地図部所属。地名の来歴や道にたたずむ謂れなどに興味があります。最近の趣味は電柱の管理プレートを読むこと。

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