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〜古民家でジビエを味わい、鶏をさばく〜(日の出町)

誰もが無料でうけられる授業。興味、関心のおもむくままに気軽に参加できるのがうれしい。 授業に参加することで、知らなかった人、知らなかったこと、知らなかった場所に出会える。そんな喜びがあるはずです。

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2014年12月21日 (日)
猟師さんと一緒にいただきます!
〜古民家でジビエを味わい、鶏をさばく〜(日の出町)

日時
2014年12月21日(日)9:15〜15:30
教室
古民家 滝本
所在地
東京都西多摩郡日の出町大久野 4807 (MAP)
定員
12名(抽選:12月15日(月)締切)
授業料
無料(但し、材料費・昼食代として中学生以上2000円、小学生500円、未就学児無料)
先生
杉 拓也
授業コーディネーター
井口 K子

【授業レポート】

※授業の様子はFBアルバムにてご覧いただけます

今、我が家のガスコンロで鍋がコトコト煮立っています。
作っているのは、鶏肉のシチュー。
お店で買った鶏肉ではありません。
自分の手で鶏を絞めてさばいた肉です。

この鶏と出会ったのは、にわ大の「いのちを考える授業」
日の出町にある古民家「滝本」にて、猟師さんのお話を伺い、ジビエ料理を食べ、鶏の屠殺を実際に行う経験をさせていただきました。

古民家「滝本」は、武蔵五日市駅からバスに乗り、つるつる温泉まで着いたあと、山道を15分ほど歩いたところにあります。
朝9時、生徒さんは武蔵五日市駅に集合。
簡単な自己紹介をした後に、鶏を絞めてさばく作業を共に行うチーム分けが、早速行われます。
グループ名は、「チーム京王線」「チームアジアン」「チームメガネ」「チームつるつる」

滝本までの移動中には、ジビエ料理のことや、これからさばく鶏をどう調理するか、チーム内で会話が盛り上がります。さすがに、鶏を絞める作業を前に、みなさん、ドキドキしている様子。

滝本に着くと、今回の先生である杉ちゃんがお迎えしてくださいます。
杉ちゃんはオーガニックコスメを扱う会社を経営しつつ、猟友会に所属しており、今朝も猟に行っていたとのこと。

和室の畳の上に腰を落ち着かせ、生徒さんが移動中に親交を深めたチーム内のメンバーの他己紹介を行っていきます。
今回は幅広い年代の生徒さんが集まってくださいました。話を聞くと、どうやら、さばいた鶏を煮込み料理に使うという方が多そう。

他己紹介が終わると、まずは杉ちゃんのお話を伺います。
杉ちゃんが猟を始めたそもそものきっかけは、東日本大震災直後の被災地へボランティアに向かった際に、海や山から食料を自分達で採って来る地域を見たこと。
それからすぐに都会からあきる野市へ引っ越し、田舎暮らしの中で、自力で食料を得ることの必要性を見出したいと思うようになったそうです。

近年、1回の猟で捕獲される頭数は増えてきているとのことです。
温暖化、猟師数の減少、里山での耕作放棄など、原因は様々ですが、増える野生動物によって、農地の作物が荒らされます。
杉ちゃんも、獣害によって廃業に追い込まれてしまった、にしがわの農家さんの話を聞いたとのことでした。

杉ちゃんは猟友会には2014年から入り、現在は狩猟免許がなくてもできる、猟の手助けを行っています。2015年の取得を目指しているそうです。
杉ちゃんの所属する猟友会では、主に猪の猟を行っており、猪の足跡を手がかりにチームでメンバーを配置し、猟犬の力を借りながら、多いときには1日2?3頭を捕っているそうです。
どうせ捕るなら、食べられるところはしっかり食べたいもの。血抜きを丁寧に行い、冷蔵で流通させれば十分美味しい猪肉が食べられるそうです。
ちなみに、狸は、捕った後に尻尾を役所に届けると、1頭当たり1000円をいただけるらしい。

お話が一段落したところで、鶏舎を見に行き、午後に実際に絞める鶏と顔を合わせます。
この鶏たちは、換羽期と言って、鶏の羽が生え換えて卵を産まない時期にいます。
ただ、採卵の効率性を上げるために、換羽期を迎えた鶏は加工食品用に処分されてしまうので、その鶏(廃鶏)を購入してくるのだそうです。

日本人は平均して、1年で1人5羽分の鶏肉を食べているそうです。
ということは。
あなたが鶏肉を食べるために、誰かが5羽の鶏を殺しているということです。
私達は、意識せずとも、命をいただいて生きているんですね。

鶏舎の鶏は、自分たちがこれから殺されることをわかっているのだろうか。
そんなことを思い、なんとなく鶏舎を振り返りながら室内へ戻ります。

鶏舎を見た後に、生徒さん同士でディスカッションを行います。
テーマは、「生きものと食べものの境界はどこ?」
「動いている鶏が、鶏肉として私達の胃袋に入る過程の中で、どこまでを生きものとして、どこからを食べものとして感じているのか」について、意見交換を行いました。
興味深いと思ったのは、鶏と魚とでは、感じ方が違うという意見。
魚をおろすことにそこまで抵抗はないのに、鶏はなかなか勇気がいる。なるほど、同じ「いのちをいただく」という行為なのに、確かに違う。

ディスカッション後はジビエ料理の昼食をいただきます。
今回は、杉ちゃん手作りのシシシチュー(猪肉のシチュー)。特別に隠し味に狸肉も入れてみたとのことです。狸肉は猪肉に比べて柔らかい口当たり。どちらの肉も美味しいです。
そして、柚子の酸味が効いたサラダと、あきる野市の「スリール」のパンもいただきました。

お腹も満たされたことで、午後はいよいよ、鶏を絞めます。
午前中に見に行った鶏舎に、今度は少し重い足取りで向かっていきます。
鶏舎に向かう途中にはヤギのサツキちゃんがいます。
杉ちゃん、生徒さんにキャベツを差し出して、「サツキちゃんにあげて」と。
キャベツを食べさせながら、いくらか緊張がほぐれていきます。
よし、行くか。

まずは、絞める鶏を確保します。
チームの3名で協力して鶏を追い込み、捕まえます。
「チーム京王線」「チームアジアン」「チームつるつる」は、しっかりと確保。
私の所属する「チームメガネ」は。。。
追い込みに失敗して、鶏舎の外に鶏が逃げてしまいました。
杉ちゃんの協力を借りて、やっとの思いで確保。
捕まえたら、足を掴んで、頭を下に。これで鶏も抵抗しなくなります。

鶏の重みを感じながら、広い場所まで鶏を運びます。
とうとう、絞めるとき。
思ったほどは暴れない鶏を寝かせ、2人がかりで地面に抑えつけます。
まだ、鶏の体温は暖かい。
もう1人が、覚悟を決めて、鶏の首をひねり、首の骨を折ります。
鶏が苦しまないように、しっかりとひねり、それからナイフで首を切り落とします。
首を切り落としたら、再び足を掴んで持ち上げ、十分に血抜きを行います。
首が切り落とされても、血が抜けても、まだ重みがある。そしてかすかに体温も残っている。さっきまで生きてたんだものね。

血抜きを終えたら、鶏の体をお湯につけて、毛穴を開かせます。
そして、そのままビニール袋の中で蒸らします。
この作業によって、鶏の羽毛が手で簡単にむしれるようになります。
チームの3人でどんどんむしっていくと、少しずつ鶏肌が見えてきます。見た目はまさに、私達が食べている鶏皮。
羽毛が少し残るので、バーナーで焼いて取り除きます。
少し香ばしい、まさに焼き鳥の匂い。
もちろん、ここは焼きすぎてはいけません。これからさばいていくのですから。
このあたりになると、だいぶ、食べものとして見えてきますね。

ここからは、室内に移動して、鶏の解体です。
手羽を切り、おなかを開き、内臓やはらわたなどを取り出します。
まだ殻ができていない卵が出てきたり、餌袋を取り出したり、本当に砂が入っている砂肝を切り出して洗ったり。。。
おなじみのものから、初めて見たものまで、様々なものが入っていました。
ハッキリ言って難しかったです。
普段、「モモ」とか「手羽先」とか、キレイに部位に分けられている鶏肉を買って食べているけれども、あんなにキレイに分けるなんてとてもじゃないけど、できませんでした。
コツがわかればできるのだそうですが、刃を入れる場所の数ミリの違いで、切りやすくも切りにくくもなります。
外国では細かく分けられていることは少ないそうで、日本で解体を行う人々の技術はとてもレベルが高いようです。

とは言え、鶏肉は鶏肉。煮込んでしまえば一緒。
「チームメガネ」では、ある程度は部位に分けたあとは、ざっくりぶつ切りにしていきました。

杉ちゃんもアドバイスはするけど、包丁を握っての指導はしません。
「最後まで自分達で体験してほしい」という想いから、手は出さないようにしているそうです。

もう、ここまで来ると食べものの鶏肉としか見えなくなってきていましたね。
チーム内で1羽から取れた鶏肉を分け合い、作業はここまでとなりました。

授業の最後に、生徒さん同士で感想を述べ合います。
自分達の手で鶏の命をいただいたという経験を、重く、だけど前向きに受け止めてもらえたようです。
興味深かったのは、鶏の首を落とした後に、鶏が軽く感じたという人と、重く感じたという人が半々いたこと。
首や抜けた血の分で、重さは減っているはずですが、鶏の力が抜けたことで重さを感じるようになったのかもしれません。

生徒さんたちの中には、つるつる温泉で体を癒してから帰宅される方もいたようです。
温かい温泉の中で、鶏の温もりを思い起こしていた方もいたかな。
そして皆さん、鶏肉はどのように調理したのでしょうね。

こうして振り返ると、本当に貴重な経験ができました。
大事なのは、この経験を忘れないこと。
肉を、魚を、そして野菜や米を食べているときも、命をいただいているということをどこかで感じながら食べること。
誰かにこの経験を伝えていくこと。
「かわいそう」や「こわい」だけではなく、現実を見つめてしっかり考えること。

おっと、そろそろコンロの鶏肉のシチューができあがりそうです。
私達は、奪った鶏の命を、これから活かす可能性を秘めているはずですよね。
そのために、まずはその命に感謝して、大切に食べたいと思います。

いただきます。

レポート:保坂三仁
撮影:清水祥子、井口K子

■テーマ
・いのちを奪って肉を食べるということについて考える。

■対象者
・鶏を絞めてさばく体験をしてみたい人。
・狩猟や猟友会について知りたい人。
・安全な食品(肉)について知りたい人。

■授業について
あなたが普段口にしている肉はどこから来たのでしょう。「いただきます」という言葉の意味を真剣に考えたことがありますか? いのちについて、肉を食べるということについて地元猟友会の人たちと一緒に考えてみませんか? 東京の里山で獲ったイノシシやシカの肉を使った料理を食べてみましょう。実際に生きている鶏を絞めてさばく作業を体験します。

「鶏の屠殺」(いただきます絵本プロジェクト)
鶏の絞め方、さばき方の工程をかわいいイラストで説明したものです。授業当日の作業と一部違う部分もありますが、参考になると思います。興味のある方はご覧ください。
(リンクの許可をいただきました)

* 鶏の屠殺・解体作業は3人一組のグループを作り、3人で1羽の鶏を扱っていただきます。さばいた鶏肉はお持ち帰りいただきます。グループ分けは当日決めます。
家族参加の場合は考慮いたしますので、申込み時にコメント欄に参加人数とお子様の年齢(学年)をお書き添えください。

* 授業でさばく鶏は追加料金(一羽につき2000円増)で、ブランド鶏「東京シャモ」を追加することもできます。
(数量に限りがありますのでご希望に添えない場合はご容赦ください)


■授業の流れ
09:15
JR五日市線線「武蔵五日市駅」に集合、受付
09:30
路線バスで移動開始。バス乗車時間20分+徒歩15分。
10:30
滝本到着。自己紹介など。授業開始。
猟友会の活動、養鶏場などについて話を聞く。
質疑応答、参加者同士のディスカッション。
12:00
昼食(ジビエ料理)内容未定。
13:00
鶏を絞める(野外作業)。解体は屋内で作業の予定。
15:00
まとめ、感想の共有。アンケート、集合写真。
15:30
終了、解散。
希望者は「つるつる温泉」へ。

■持ち物
エプロン(鶏の毛が付着しにくい服装)、軍手、マスク(羽毛を吸い込まないため)、手を拭くためのタオル。 飲み物、筆記用具。

■定員・締切
12人(先着) 締切 12/15(月)

■注意事項
※汚れても良い靴、服装でお越しください。
※防寒対策をしっかりしてきてください。
※天候により中止、または内容を変更して開催する場合があります。
※移動のためのバスの運賃は各自お支払いとなります。片道400円。
※バスは30分に1本程度の運行です、遅刻しないようにお越しください。


※学生登録してからお申し込みください。
※最近HotmailやGmail等のフリーメールからお申込みいただいた方で参加のお知らせをお送りすると「迷惑メール」フォルダに自動的に入ってしまい、気づかずにご参加いただけなかった方が増えています。本授業をフリーのメールアドレスからお申し込みいただいた方はご注意ください。

先生プロフィール:
杉 拓也 (猟友会会員 )

東京都武蔵野市出身、国際基督教大学卒。オーガニックコスメ(株)フルフリの経営者。 2005年の創業以来、手作り方式の自然派化粧品にて、述べ1万人以上の肌トラブルを抱えたお客様をサポート。あきる野市五日市には、東日本大震災を機に、都会生活・貨幣社会への危機感を感じ2011年に移住。 自社理念である「お肌と一緒に考えるスキンケア」を提唱するとともに、地域活性化、社会問題解決などをコスメの視点から解決できないか模索中。 趣味は長唄三味線。好きなジビエ料理は、シカ肉の赤ワインシチュー。

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