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誰もが無料でうけられる授業。興味、関心のおもむくままに気軽に参加できるのがうれしい。 授業に参加することで、知らなかった人、知らなかったこと、知らなかった場所に出会える。そんな喜びがあるはずです。

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2013年9月 8日 (日)
鉄道に乗って「にしがわ」を感じる。第4回「奥多摩・五日市編」

日時
2013年09月08日(日)10:00〜17:00
教室
立川→(青梅)→奥多摩→(青梅・拝島)→武蔵五日市→立川
定員
10名
授業料
無料(ただし、電車代1,600円+昼食代1,000円程度は実費)
先生
今田 保
授業コーディネーター
小松 伸一

【授業レポート】
※授業の様子はFBアルバムにてご覧いただけます。

4回目を迎えた鉄道の授業。半年に1度のペースでにしがわの鉄道に乗って、地域と公共交通のあり方を考えます。普段何気なく使っている鉄道も、今田先生の視点による解説は新たな発見が多く、特別鉄道好きという訳ではない人も惹きつけます。

第1回は八王子駅と新宿駅を、行きは京王線、帰りは中央線で、東京の東西を往復しました。第2回は国分寺駅から本川越駅まで西武鉄道の歴史と川越と名のつく3つの駅を巡りました。第3回は多摩ニュータウンを巡る鉄道を乗り倒し、街との関係を考えました。今回は東京の水がめ、奥多摩に向かう青梅線と五日市線の終着駅に執着して、それぞれの路線について考えました。

朝10時、立川駅に集合。いつものように今田先生の資料を配布し、乗る路線の歴史について説明がありましたが、前回の予定時間オーバーをふまえて軽めの解説でスタートしました。

青梅線は立川駅〜西立川駅間で2つのルートがあります。上下線共有の単線と中央線から青梅線に直通する下り列車専用線の2つです。今回は中央線からの直通列車に乗り、専用の下り線を体験するところから始まりました。この下り専用線はかつての五日市鉄道の一部を利用しており、これで中央線との立体交差は中央線の過密ダイヤの邪魔することなく直通運転する事ができます。また、青梅線と南武線を直通する場合にも利用されています。

青梅線は東青梅駅までが複線となっており、住宅街の中をずっと直線的に突っ切るように線路が敷かれています。車窓にはとにかく住宅街が広がり、駅間も短くなっています。まさに東京のベッドタウンであり、近年中央線との直通列車の本数が増えているため、通勤通学の利便性はより増しています。しかし、青梅駅を境にその風景は一変し、急に山岳路線としての顔を見せるようになります。

青梅駅は青梅鉄道の本社として建てられたもので重厚感のある作りです。また、レトロな街として売り出している青梅市と共に構内や待合室も映画看板などでレトロ感を演出しています。今回は少し乗換時間があったため、一度改札外に出て駅舎の外観を眺め、本社として機能した頃に思いを馳せました。

青梅駅から奥多摩行きの電車は御嶽山に行く人が多いようで御嶽駅を過ぎると車内はまばらに。天気が悪かったからか、奥多摩駅周辺は人も少なく、日曜日にも関わらず少しさびしい雰囲気でした。

昼食を3班に分かれて取ったあと、かつて小河内ダムを作るために東京都水道局が敷いた資材輸送専用鉄道の遺構を遠目から見学しました。この路線はダム建設後、西武鉄道が観光開発のため買い取ったが結局計画は頓挫し、めぐりめぐって現在その線路跡地は石灰を採掘販売する奥多摩工業が所有しています。この会社はかつて御嶽駅〜奥多摩駅間を敷設しようとした奥多摩電気鉄道のことです。トロッコ列車でもかまわないのでこの線路跡をぜひ有効活用してもらいたいところですが、このご時世ではなかなか難しいようで残念です。

奥多摩を見たあとは、今回もう1つのテーマである五日市線に乗るため拝島まで戻ります。五日市線は支線の支線(中央線の支線の青梅線の支線)といった形で、線内折り返し運転の列車が多く、短い事もあり全線単線です。

この線もまた石灰や砂利輸送のために作られたもので、現在は廃止となっていますが武蔵五日市駅の近くの太平洋セメント用に貨物輸送が行われていました。モータリゼーションにより、トラックによる陸送に取って代わられてしまい、今では青梅線と同様に通勤通学路線となっています。

なお、武蔵五日市駅はかつての街から少し離れた所に位置しています。木炭の集積地として栄えた五日市の街も、鉄道が通ると街が寂れる、蒸気機関の噴煙をおそれたなど、よくある鉄道忌避の話がいくつか伝わっているようです。とは言え、地形や用地買収などが要因で町外れに作ったと考えるのが妥当ではないでしょうか。

そして、今回乗った2つの路線について、先生からの解説と話し合いをするため、老舗呉服屋さんが営むカフェ「きれ屋」さんへ。1階は昔ながらの呉服屋の顔をと、その裏にはモダンで落ち着くカフェがあり、2階には手ぬぐいギャラリーもあり、2階でお茶を飲みながら青梅線と五日市線について考えました。

どちらの路線も石灰石や砂利を輸送するという元々の目的から、いまや通勤通学や観光輸送が主となっており、役割が変わってしまいました。奥多摩方面はまだ観光輸送がそれなりにありますが、現在の経済状況では今後大きな開発・発展は見込めないため、路線としてはいかに現状を維持していくか、という事に知恵をしぼる必要があると思われます。今回参加した生徒の多くも、観光に行くとしても自動車を利用する場合がほとんどで、電車を使わないため、視点が変わって新鮮だった、新しい発見があった、との声がありました。
普段とは違った角度になるため、鉄道利用により新しい街の特徴を発見し、それを利用促進に活かせたらと感じました。

鉄道の発展は街の、文化の発展であり、それゆえ中央線沿線は早くから発展し文化に厚みがあるとの意見が出ました。その支線である青梅線や五日市線としては、立川など現在勢いのある中央線沿線の街から興味や人をひきつけられるようになって欲しいところです。

きれ屋さんの店主の「五日市はみなさんにとっては終着駅かもしれないが、我々にとっては始発駅です」という言葉にはハッとしました。住民の方がこういった考え方であれば、それほど暗くはないのではないかと思いました。

今回の授業でにしがわの西の端まで制覇した事になりますが、まだにしがわに鉄道は残っています。また次なる鉄道の授業に期待しつつ、立川に戻り、打上げでは多いに鉄道談義に花が咲きました。

(レポート:佐藤 泰輔)

■テーマ
この区間のルーツは石灰石などの物資輸送でしたが、今は観光・通勤として親しまれています。そして実は、戦争により廃止された区間もあり、歴史をひも解くと鉄道の存在価値や地域との結びつきも見えてきます。こうした過去と現在を見据えながら、地域と鉄道の在り方・関わり方について考えます。

■対象者
鉄道好き以外にも、青梅・武蔵五日市エリアに興味のある人、住んでいる人、住んでいた人などにも参加してもらいたいです。

■授業について
キーワード
1.終着駅
2.戦争で消えていった鉄道
3.地域と鉄道
今田先生の話を聞き、今まで見えていなかった「にしがわの風景」や「鉄道の魅力」を再認識する小さな旅のような授業です。参加者のみなさんと話をしながら、時には、暴走したり、脱線したりと楽しい1日になる予定です。

■授業の流れ

10:00
JR立川駅グランデュオ入り口付近集合・説明
10:26
JR青梅線乗車
11:15
青梅駅着、乗換
11:50
奥多摩駅下車→昼食・散策
13:40
奥多摩駅乗車
14:20
青梅駅着、乗換
15:00
拝島駅着→五日市線へ乗換
15:15
武蔵五日市駅着→散策・議論
17:00
解散

■持ち物
カメラ、筆記具を必要に応じて用意してください。

■定員・締切
10名(応募者多数の場合は抽選)

■注意事項
Suica等のIC乗車券をお持ちの方はあらかじめチャージしておいてください。
※学生登録してからお申し込みください。
※最近HotmailやGmail等のフリーメールからお申込みいただいた方で参加のお知らせをお送りすると「迷惑メール」フォルダに自動的に入ってしまい、気づかずにご参加いただけなかった方が増えています。本授業をフリーのメールアドレスからお申し込みいただいた方はご注意ください。

先生プロフィール:
今田 保(公共交通アナリスト)

1947年9月生まれ。1971年4月-1976年12月、月刊誌「鉄道ピクトリアル」編集部勤務。その後は、1977年8月設立の出版社「ジェー・アール・アール」において、鉄道書刊行の業務とともに、鉄道、航空、高速バス、カーフェリーなど、広く公共交通機関の取材を続け、そのあり方を考え続けてきた。そのあり方とは、「誰もが、いつでも、どこへでも自由に移動できることか」と。なお、日本の鉄軌道は、JR・私鉄の全路線を1992年12月5日に、日本の空港は、離島も含めて1998年12月5日にすべて制覇。その後も毎年タイトル防衛中。このほか、高速国道や主要航路もほぼ制覇。ロープウェイもスキー場専用以外はほぼ制覇。海外取材は米欧亜など計7回ほど。「交通」ほか「都市」「流通(商業環境)」「観光」をも調査対象としている。
所属:鉄道史学会、産業考古学会、鉄道史研究会、交通研究会、交通ライターの会、日本鉄道文学研究会。また、著書「郷愁 国鉄の時代」がイカロス出版より8月22日に発売。

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