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誰もが無料でうけられる授業。興味、関心のおもむくままに気軽に参加できるのがうれしい。 授業に参加することで、知らなかった人、知らなかったこと、知らなかった場所に出会える。そんな喜びがあるはずです。

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2013年7月 7日 (日)
わかる かんじる 未来のためのサクラ健康診断(立川市)

日時
2013年07月07日(日)10:00〜12:30
教室
根川緑道
集合場所
立川市柴崎市民体育館前
JR立川駅 南口より徒歩15分、多摩都市モノレール「柴崎体育館」より徒歩3分)
定員
10名
授業料
無料
先生
甲野 毅
協力
根川緑道とさくらの○○○の会
授業コーディネーター
古川 ゆかり 浅見 義孝

【授業レポート】
※授業の様子はFBアルバムにてご覧いただけます。

織姫と彦星が年に一度会える七夕。彼女と彼がそわそわしているそんな日の朝、東京にしがわ大学では7月ふたつめの授業が開催されました。
テーマは天の川?いえいえ、サクラなんです!!

■AM9:45 受付開始 立川柴崎市民体育館前
13名の生徒さんが集合です。普段は参加者名簿にチェックして受付終了ですが、今日は違います。「根川緑道ってどんな感じ?」「桜は?」ふたつの質問に対する答えを付箋紙に書いて「イメージを書こう!」ボードに張ってもらいます。みなさんのイメージは・・・。

<根川>
・安らぐ場所、水の音、桜が多い
・散歩しやすい、子供が遊んでいる
・人工的でちょっとつまらない
・残堀川、詩歌の道
・青春の一コマ
・初めて来たのでイメージないです etc.

<桜>
・花見、酒
・一年の節目
・入学式、春の定番
・ソメイヨシノだけが桜ではない、根っ子を踏んじゃダメ
・パッと咲いてパッと散る儚いイメージ
・日本の癒し、心が躍る etc.

さて、このイメージが授業終了後にどのように変わったのでしょうか。えっ、たいして変らないだろう?それが、大きく変わるのですよ。どう変わったかは、最後のお楽しみです。

■AM10:00 スケジュール紹介、自己紹介
生徒さんの参加動機はそれぞれです。
・ソメイシヨシノが生まれたとされる豊島区駒込に住んでいる
・家の隣に大きなサクラの樹があり、健康診断に興味津々
・普段見ているサクラを別の視点から見てみたい
・忙しい日常で山に行きたいと思っていた時に運よく緑を感じられる授業を見つけた
・サクラに限らず樹そのものに興味がある
等々、みなさんけっこう本気モードの動機です!

■AM10:30 授業開始
甲野先生のグリーンワークショップの開始です。まずは付箋紙に書いてもらった二つのイメージに沿って、根川とサクラの講義です。

(1) 根川緑道について
立川市南部の根川緑道周辺の地形図を示しながらの説明です。この周辺は立川段丘沿いに位置しており、多摩川、残堀川、立川崖線から流れ込む湧水、柴崎分水(用水)と多くの水源が複雑に入り組んだ地形です。豊かな水に恵まれた土地ですが、昭和の高度成長期には生活排水などで汚されたことは根川も例外ではなく、昭和47年頃にこの緑道付近の川はいちど埋められてしまいます。しかし、どうせ埋めるのならそのままにせず、市民の憩いの場所を作ろうと平成4年頃から整備されはじめ、全長約1.3kmに及ぶ現在の根川緑道になりました。
そして、根川の水源について生徒みなさんが驚いたのは、下水道生活排水を浄化したものを最上流の湧水として利用し、それを下流の多摩川へつなげているとのお話です。その水量は1日約2,700トン。多様な生物が住み、小さな子供たちが遊んでいる川が、元は私たちの生活排水だったとは、今の下水道浄化技術の向上に驚かされます!
「水のある所に人は住む」先生の樹木と緑に対する愛情がひしひしと伝わってくるお話でした。


(笑いのツボを押さえた甲野先生の説明で、導入からすぐに和やかな雰囲気になれました)

(2) サクラ(ソメイヨシノ・染井吉野)について
地理的なお話から、サクラの講義に移ります。全国の桜の名所といわれるほとんどのものはソメイヨシノ。根川緑道も同じです。
「あまり知られていませんが、ソメイヨシノは江戸時代後期に江戸の染井村で生まれた、今でいうところのクローン植物です。一斉に花が咲き、一斉に花が散り、樹ごとに個体差がないのはこのためです」「ですので、一斉に枯れ果て、全国規模でサクラの花が見られなくなる。そんな悲しい未来もいずれ・・・」
ソメイヨシノには寿命があるのです。それは人間と同じ60歳から100歳くらいと云われています。人間と同様に長寿を保つ為には、今回のように健康診断を通して樹木への視点を変えること、そして微力ながらも私たちの環境に対する現状認識と小さなアクションの連続が必要とのお話でした。

(3) 根側緑道散策
一通りの説明を受けた後は、上流に向かって、緑道を散策します。川の途中では、清流魚とされるアブラハヤやオイカワを発見したり、タラヨウの葉で遊んだり、内容の濃い解説と緑の中で、生徒さんの表情はどんどん明るくなっていきます。下水道を浄化した人口の川の中にも多様な生物が住む水と緑のテーマパークのような緑道、あなどれません!ここに住む魚たちは下流の多摩川から登ってくるそうです。きっと住み心地がいいのでしょうね。


(根川に生息する生物についてお話を聞いている生徒さん。みなさん真面目な表情)

(4) サクラ健康診断説明
本日のメインイベント、サクラ健康診断が始まります。生徒のみなさん、また少しだけ緊張です。でも「樹木の診断カルテ」があれば安心です!
診断カルテには8つの診断ポイントの項目があり(例:全体のバランス、枯れた枝の有無、樹の肌の感じ等)、それぞれに1点から4点まで点数をつけていきます。今回使用の「樹木の診断カルテ」は授業用に簡略したものですが、先生のようなプロの方が使用するものは25項目くらいあるそうです。
今回、みなさんで診察したサクラ(写真参照)の結果は36点満点中、16点。遠目には健康そうに見えますが、「病気になりかけている」という診断結果になりました。
また、この8項目以外にも「木製・ゴム製のハンマーで樹を叩き、音で空洞の有無を確認する」「キノコ・樹液の有無」等も重要な診断のポイントになります。
ちなみに樹液が出ている部分は病気の状態で、コスカシバという虫の幼虫から身を守るために樹液を出しているそうです。樹液が出ているのは元気な樹と、反対のことを思っていませんでしたか。


(今まで全体をぼんやりと見ていた樹を具体的なポイントに絞りながら診断します)

(5) 自分だけでサクラの診断(トントン体験)
さて、診断方法がわかったら次の樹に移ります。今度は、個人でお気に入りの1本を探し、自分だけで診断してみます。生徒さんが選んだ樹、やはりその人の個性が出ていましたね。


(さて、どのサクラを診断しようかな・・・)


(根元から出ている小枝は少なめかしら。ヒコバエが根元からたくさん出ていると、水分をそちらに取られて良くないのよね)


(生徒さんの一人がキノコのコフキタケを発見!ここから腐朽する原因のひとつになります)


トントン(中が詰まっているような重い音なら良好。空洞のような軽い音なら良くない状態です)


トントン(同じ樹でも部分によって音が違います)


トントン(聴診器は使いませんが、お医者さんが胸を手でトントン叩いて肺の音を聞く診察に似ています)


(サクラから元気をもらっていた私たち。もらいっぱなしで、サクラにお返しをしていませんでした。キミも傷ついていたんだね)

(6) まとめ、生徒さんの感想
一通りの診断を終えたら再び集合場所に戻り、本日授業のまとめです。

<先生からのメッセージ>
「今まで、ただ全体をなんとなく見ていたサクラ(サクラに限らず)ですが、それぞれのパーツ、ディテールを見ることの大切さに気が付いていただけたでしょうか。病気か、病気でないか。病気の部分を切るか、敢えて切らないか。切るなら何処をどのように切り、外的要因の菌から守るか。判断は樹木医によっても違います。そして、こうすれば完全に治るという治療法は残念ながらありません」(ちなみに甲野先生は「できるだけ切らない派」だそうです)
「では、これからどのようにして次世代にサクラを残してゆくのか。それを考えるのは私だけでなく、みなさんなのです。例えば、ニュースなどで見かけますが、公共事業などで、それまであった老木が切られる場合も、この樹を切らないでと単純に叫ぶだけでは、ただの一方的な反対運動で終わってしまいます。では、どうすればいいのかを行政に投げかけ、行政と市民が共に地道に話し合い、行動することが大切なのです」

<生徒さんのイメージの変化(イメージから具体へ)>
生徒さんたちの根川とサクラに対するイメージがどのように変化したのでしょうか。生徒さんからの感想は、
「サクラといえば春にしか関心がなく、咲いて散ったで、終わっていた。これからは四季を通じて見つめていきたい」
「サクラといえば花見とお酒。花のないサクラの樹をこんなによく観察したのは、とても良い体験になりました」
「サクラの花が咲くと上ばかりを見ていました。これからは幹も根も見て健康状態を確認したいです」
「卒業、入学式など、お祝いのイメージにつきもののサクラ。美しさをもらうだけでなく、こちらからもサクラにお返しをしたくなりました」
「子供の頃に田舎でよく木登りをして遊んだ樹があり、久しぶりに思い出しました。健康診断をしながらあの樹は元気でいるかなと思い、こんどまた見に行きたいです」
「自分は樹からエネルギーをもらってばかりで、こんどは自分が樹にエネルギーを返していきたいです」
「人口的な根川をつまらなく思っていましたが、人口の川にも多様な生物が生息しているのに驚きました。これからもっと足を運びたくなりました」
「下水道の浄化技術を自然に活かすところ、立川市の行政を褒めてあげたいです」

みなさん授業の前と後では、ずいぶん意識が変化しましたね。
解散してそれぞれの街に戻っても今日ここでのことは忘れずに。

最高気温35度のとても暑い日でしたが、おつかれさまでした。そしてありがとうございました!
来年の春、桜が満開の季節にまたみなさんとここでお会いしましょう!
そして、10年後も20年後も子供たちの未来のために、今日の授業を忘れずに!


以上

千野(東京にしがわ大学スタッフ)

■テーマ
サクラ健康診断
サクラの保全活動について考えるbr /> 根川緑道の自然鑑賞br />

■対象者
サクラの好きな人
根川緑道が好きな人
環境保全・自然保護に興味のある方
サクラ健康診断をしてみたい方(ハンマーでサクラを叩いてみたい!)
地球環境ガバナンスに参加したい人

■授業について
今年のサクラはどこで見ましたか?

多摩地域には桜の名所がたくさんあります。
でも、近年の環境の変化により、サクラの育つ、美しい環境が失われつつあると聞きます。

では何故、どんな風に影響をうけているのでしょうか?
ランドスケープアーキテクチャーとして景観設計を行いながら、NPO活動を通じて自然を守る活動も行っている、樹木医の甲野先生と一緒にサクラ健康診断を通して検証していきます。

教室は、市民の散歩道として親しまれている立川市の根川緑道。
全長1.3?にも及ぶ根川緑道には約250本の桜の木があり、春には満開の桜が私達を楽しませてくれる多摩地域きっての桜の名所です。
根川緑道の緑豊かな自然の植物の魅力についても先生にお話し頂きつつ、サクラ健康診断の仕方を学びます。
樹木診断シートに従い検証しながら,最後は特殊なハンマーを使い"音"でもその状態を探っていきます。
健康に見える木でも、実際調べてみると意外な結果がわかるかもしれません。
そして、診断の仕方がわかると、サクラの木を見る目が変わるかもしれませんよ。

サクラを守る事は、自分たちの未来の自然環境について考えること。
来年も、再来年も、子どもや孫を連れて、また同じ場所でサクラを眺めたいと、思いませんか?

来年の、将来のサクラのために、いま私達が出来る事を共に考える機会になればと思います。
来年のサクラに想いを馳せつつ、サクラの、自然の未来を共に考えませんか?

■授業の流れ

09:45
受付開始
10:00
はじめに 自己紹介 スケジュール紹介など
10:30
根川緑道散策 20分
サクラ健康診断説明 30分
サクラの診断(トントン体験)30分
12:00
まとめ
12:30
記念撮影 アンケート 終了 

■持ち物
筆記用具、飲み物など。
野外での授業です。暑さ対策として帽子、タオルなど各自ご用意ください。
終了時間が12時を過ぎますので必要に応じて、食べ物など。

■定員・締切
10名(先着順)

■注意事項
少雨決行、荒天は中止します。
(天候が不安定な場合は、原則、前日までに参加者にメールで決行の有無をお知らせします)
※学生登録してからお申し込みください。
※最近HotmailやGmail等のフリーメールからお申込みいただいた方で参加のお知らせをお送りすると「迷惑メール」フォルダに自動的に入ってしまい、気づかずにご参加いただけなかった方が増えています。本授業をフリーのメールアドレスからお申し込みいただいた方はご注意ください。

先生プロフィール:
甲野毅(樹木医)

博士(農学)・樹木医。?緑住環境計画、設計部に所属し、立川駅前のアーバンライフ立川の外構計画、都立六道山自然公園等の計画に携わる。NPO法人集住グリーンネットワークの設立に参加し、多摩地区において里地・里山の保全活動や子供達への自然環境教育に取り組む。「根川緑道とさくらの○○○の会」において地域の様々な主体による地域環境ガバナンスの構築を夢見て奮闘中です。

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