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誰もが無料でうけられる授業。興味、関心のおもむくままに気軽に参加できるのがうれしい。 授業に参加することで、知らなかった人、知らなかったこと、知らなかった場所に出会える。そんな喜びがあるはずです。
これまでの授業レポート
2011年11月12日 (土)
皆とシェアする" 自宅ミュージアム"を開館しよう! 〜少女まんがの館を訪ねて〜 (あきる野市)
【授業レポート】
JR青梅線、武蔵増戸駅から歩くこと約15分。いったいこの町のどこにあるのだろうという位、たどりつくまでがまず冒険。秋川渓谷を越えて、雑木林をくぐり、視界が開けたところに見えたのは、不思議な真っ青な一軒家。
「女ま館?」とたずねられているその看板は来訪者を一瞬困惑させるといったユーモアにあふれています。
たどり着くまで迷い、わくわくしたり不安に思いながらおのおのたどり着き集まったのは7名。
男性・女性、年代も20?50代まで幅広く集まりました。
参加者の皆さんの興味はさまざま。
ある人は自宅ミュージアムに興味がある人、またある人は少女マンガに興味がある人。
プライベートを解放するっていうことに興味がある、マンガが好き 、女ま館自体に興味がある、自宅ミュージアムをやってみたいから参考にしたい・・・などみなさん興味深々のようです。
女ま館は名前の通り、少女マンガに特化したミュージアム。中野さん、大井さんご夫婦二人で運営をしています。
そして、なんと個人で建てた建物であるということが驚きです。
はっと目が覚めるような水色はミュージアム裏手にある弁天山をイメージしただけではなく、火除けの意味をこめていたり、建物を建てた建築家さんが水色好きだった、本が映えるからといったいろんな理由があるそうです。それにしてもとても鮮やかで、これなら山道で迷っても誰でも見つけられそうです。
建物の総建築費は600万円、立派な一軒家なのに総工費を抑えられたのは、ご自分たちでできることをDIYしたからだそうです。その構造はとてもしっかりしていて、コンクリートで基礎を高くしてるから湿気に強く、重量にも耐えられる、など本のために建てた建物なので、かなりの量のマンガが詰まっているにもかかわらず、ゆがむこともなければしなることもなく、立派です。なんと地震の時にも本は動かなかったそう。
建物は構造上一階建てですが、建築物として、法的に4.3メートルの柱を使用していて、他にこんなに長い柱はないらしいですよ。
おそるおそる中へ入ってみると、本はコーナー別に別れていて、建物の中がきっしりマンガだらけ。おなじみのマーガレットやKCコミック、リボンコミックスや、ちょっと濃厚な秋田書店、花とゆめなどなど・・・出版社別に整然と並んでいます。
その本や本棚は寄贈や、古本屋さんとかの処分品などをゆずりうけているそうです。
寄付金として振り込んでいただいたお金や募金箱にいただいたお金で、購入品をまかなっているとのこと。
そのお金でアンティークの書棚を買ったり、中野さん、大井さんの私物の書棚を再利用したりもしているそう。
まだSNSの栄えていなかった開始当時、インターネットを通じてHPで本の寄贈や寄付金の依頼について一言告知していたそうです。それなのにも関わらず、熱心に寄贈し続けてくれる方や、ダンボール箱単位で毎週のように送ってくれる方など、そういった熱心な方の活動や口コミ、SNS、サーチエンジンやブログなどを通して、その寄贈率は高まっていき、今では送付される本の整理が追いつかないところまで達しているそうです。
人とネットワークのつながりについて改めて感心させられます。だってたった一言HPに掲載していただけなのにですよ?驚きです。
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ところで、入口には、芳名帳を書くこと=来る人の正体が分かる 自宅をひらくことで正体が知らない人が来る不安を心理的に安心させる効果があるそう。芳名帳にもそんな意味があったんですね。
お二人は女ま館を始めた理由としてこんなことを話していました。
昨今、縁側カフェがはやっているけれど、縁側=セミパブリックな場所、それが現代にはなくなってる。ならばそういう場所と時間をつくるべき! と思った。
夫婦ともに漫画が好きで、現代において、特にプライオリティーが低くなってしまっていると危機を感じていた少女マンガについて大事にしたいし、広めていきたい、と。
そこにはただの自宅開放だけではなく、プラス、マンガをツールにするっていうことに意味を感じてるそうです。
自宅開放を始めることで、感覚が劇的に変わったとのこと。
自分の家にある物を通して、他人とコミュニケーションをとることが醍醐味であり、それが二人の女ま館を続けるゆえんだといいます。
女ま館でコミュニケーションを深めるために、二人はこんなことを意識しているとのこと。
来訪者には必ず、お茶を必ず出し、その時に相手が求めているものが何を探るそうです。
求めている物はそれぞれちがう訳で 、例えば、少女マンガが好き、女ま館じたいに興味がある、自宅ミュージアムに興味がある、運営してる二人に興味があるなど。その求めるレベルによって、話しかけ方だったり、距離の置き方も変えるそう。すごいですね。
この日もお二人からお茶とお茶菓子を全員ごちそうになりながら、心行くまで話を聞かせていただきました。
楽しみながら、話すお二人の目はとても生き生きとしていたことが印象的です。
自宅ミュージアムを始めた理由、楽しみ方、についてたくさん話していただいた後、参加者が考える自分が作ってみたいミュージアムについて発表をしあいました。
靴のコレクション
絵本の読み聞かせミュージアム
古今東西のボードゲームミュージアム
料理本コレクションとカフェ
アートのコレクション、同人誌、イラストのミュージアム
少年マンガのジャンル別ミュージアム
子供向けの絵本のミュージアム
自宅の庭を開放して園庭として貸し出す
沢山の思いやアイデアに溢れていて、今度が楽しみです。
また、中野さん、大井さんは今後こんなことをやってみたいそうです。
中野さん
少女マンガでも一部のジャンルに特化した(例えばバレーボール少女マンガ、学園もの少女マンガ・・などなど)ニッチなミュージアムをやっていきたい。
大井さん
近所の公園でリヤカーに本を乗せていって、本の読み聞かせをする⇒現代版の紙芝居や三のようなイメージ
最後に二人は女ま館についてこのように語っていました。
自宅ミュージアムは利益とかを追求したものではない。それは趣味である。
金持ちの道楽、というのはあるが、貧乏には決してそのようなことがない、というわけではない。
じゃあ、貧乏にも道楽を作ってやろうぜ、といって始めたのが、自宅ミュージアムであった。
どんな状況、境遇、人であったとしても、趣味とは人を豊かにしてくれる。東日本大震災以降、様々な問題や現実に直面していて、これからさらに厳しい時代を生きていくことになると思う。子供たちにとってはなおさらそれを感じなくてはならない時代。これからそんな時代を生き抜くためにも、心を豊かにすることにどうか糸目をつけないで欲しい。
本来は3月に実施する予定であったこの授業は、折しも東日本大震災の為、いったん延期となっていました。
しかし、延期になり、再びこの時期に再開できたことに大きな意味があるように私は感じました。
自宅開放つまり、他人とのコミュニケーションの場の提供、これは震災をきっかけにより繋がりを見直し始められている今の世の中だからこそ必要なツールなのではないでしょうか。
そのことを改めて強く感じさせられました。参加者にとって、思いを発信する、繋がりを作る、ということについて考え、実行できるきっかけの一つとなれていればと願うばかりです。
■テーマ
「自分だけの空間を、ちょっとだけみんなの場所へと開く」新しいコミュニティづくりのための"自宅開放運動"、【自宅ミュージアム】を体験してみる。
■対象者
つながる新回路/コミュニティ/住み開き/少女まんが/あきる野市/OTAKU などのキーワードに関心がある人
■授業について
自らの趣味や道楽、関心ごとのコレクションや蔵書などを収納した"プライベートスペースをちょっとだけセミパブリックに開く"=【自宅ミュージアム】を,あきる野市で実践する、総水色建築「少女まんが館(略称:女ま館)」が今回の教室。
読み捨てられていく少女まんがを憂い、"少女まんが救済!"をかかげ、少女まんがの永久保存を目的として、1997年、自宅の一角に「少女まんが館(略称:女ま館)」をオープンした、館主の中野純さんと大井夏代さん。このお二人が今回の先生。
みんなが「自宅ミュージアム」をはじめたら、ひととひとがつながる回路が変わるような、全く新しい経験や醍醐味が生まれ、東京にしがわのまちももっと面白くなるじゃん!という、提唱者でもあります。
今やこのプロジェクトをキッカケとして,全国から貴重な寄贈本が日々,段ボールで届き、「全国マンガ・アニメ連絡協議会設立準備会」にも参加し、"三鷹のジブリか、あきる野の女ま館か!?"と海外にも発信する、東京にしがわの聖地!?を訪ねてみませんか?
着いたら着いたで、
「ここ、ただの"他人の家(ひとんち)?"、間違ってないよね、少女まんが館だよね?」って不安に襲われるかもしれませんが・・・。
この授業をキッカケとして、【自宅ミュージアム(自宅開放)】という運動が、東京にしがわの新しいコミュニティづくりの潮流となることを願っています。(連続シリーズ授業としての展開も検討中です)
■授業の流れ(予定)
- 13:00
- 受付開始
- 13:30
- オリエンテーション+建築外観ガイド
- 13:50
- 寄贈本献上式(※希望者のみ)を兼ねた参加者自己紹介
- 14:15
- 少女まんが館の歩み:先生レクチャー&ガイド
- 14:45
- 女ま館内 満喫 (ゆっくりと少女マンガの世界にひたってください)
- 15:15
- ディスカッション
- 15:45
- 東京にしがわ" 自宅ミュージアム"宣言?+記念撮影
- 16:00
- 解散
■定員
7名(応募者多数の場合、選考抽選とさせていただきます)
■締切
11月6日(日)24:00予定
当選、落選は、11月7日(月)頃、ご連絡を予定してします
■注意事項
・希望する方のみ、自宅に眠る少女マンガ本を「女ま館」への寄贈図書として、ぜひお持ちください。
・[女ま館」は、少女まんがが好き、少女まんが文化資産を保存共有して残したいという想いを共有する人同士がシェアする、私設図書館です。趣旨を理解のうえ参加ください。
※学生登録してからお申し込みください。
※ほかの授業への重複申込みは無効となりますのでご遠慮ください。
先生プロフィール:
中野 純(なかの・じゅん)
1961年生まれ。体験作家。夜の山や街を歩く「闇歩きガイド」あるいは「ナイトハイカー」「有限会社さるすべり」主宰。少女漫画専門の私設図書館「少女まんが館」共同館主。著書に 『闇を歩く』 『月で遊ぶ』 『東京「夜」散歩』 『東京洞窟厳選100』 『庶民に愛された地獄信仰の謎』など
先生プロフィール:
大井 夏代(おおい・なつよ)
1961年生まれ。定点観測歴約20年のストリートファッション考現家。少女まんが館館主。