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2011年1月 8日 (土)
【授業】 しんねんに てぬぐいを つくりたい つかいたい

日時:2011年1月8日(土) 14:00〜16:30
教室:きれ屋
   あきる野市五日市1 http://www.kireya.com
定員:20名(応募者多数の場合は抽選、12月22日申込締切) 
授業料:無料  新年会飲食費代1000円(当日支払い)
先生:安藤 諭(栗原呉服店4代目)
   中村 幸代(ウェブデザイナー、てぬぐいデザイナー)
協力:きれ屋、てぬコレ 
飲食コーディネーター:古田 陽子
授業コーディネーター:萩原 修 

2011年1月8日 (土)
「新年に 手拭いを 作りたい 使いたい」&新年会

授業コーディネーター:萩原 修
飲食コーディネーター:古田 陽子
先生:安藤 諭(栗原呉服店4代目)
先生:中村 幸代(ウェブ・手拭いデザイナー)
サポートスタッフ:ニシヤマ トメ子(撮影)
サポートスタッフ:立川 準(レポート)
臨時スタッフ:のぐち ようこ(受付)
サポートスタッフ:鈴木美彩子(欠席)
レポート担当役の立川です。よろしくお願いします。

いい天気です。五日市線に乗り、久々に単線のローカル感を味わいながら、遠景の山並み、雲ひとつない青空をボーっと眺めつつ、いよいよ山間部に入ったと思ったら、そこが終点、五日市駅。この五日市線は大正14年に開業、幾多の変遷を経て今日に至っています。皆さんは立川駅の中央線ホームから南回りで西立川へつながる単線のルートがあるのをご存知でしょうか。これが実は昔の五日市線の名残りなのだとか。私は日野から都内に通勤しているのですが、いい気分での帰宅時に、この線路で西立川駅に行ってしまったことが幾度か...。更にこのルート、当初は青梅線の計画路線だったとか。なぜ青梅線は現在の位置になったのか、なぜ五日市線が青梅線の計画跡に出来たのか、誰か詳しい方、授業にしてくださ〜い。

余談はさておき、五日市駅の改札を出て、檜原街道を西に10分ほど歩くと、にわ大ののぼり旗が...レトロなたたずまいの栗原呉服店がありました。手前のカフェ「きれ屋」の暖簾をくぐると、中は板塀路地風の通路。抜けると二階まで吹き抜けのカフェ。あれ!誰も居ない。でも靴が並んでる...私も脱いで急な階段をしがみ付くようによじ登って二階の会場へ。おう、修さんがいた。やれやれ。約束通り12時ちょうどです。

教室は立派な床の間のある十畳の座敷(床には金子みすず22歳のときの詩「大漁」...朝焼け小焼けだ大漁だ 大羽鰮(おおばいわし)の大漁だ 浜は祭りのようだけど 海のなかでは何萬の 鰮のとむらいするだろう、ミニチュアの機織り機、花生けにはセンリョウ、そしてお婆さんが使っていたお茶の小棚、左の地袋の上にも何やらいわくのありそうな小箱が飾られています)と、南側が全面出窓になっている八畳のタタミを外した板の間が二部屋。まぶしく日が射しています。スタッフの内輪紹介のあと、「てぬコレ」のいろいろなデザインの手拭いの飾り付け、原画や染め工程の写真パネルの展示、テーブルには雑誌「Discover Japan」と「MetRO min.」を。座布団も並べて準備完了。キッチンではご馳走の下準備もちゃくちゃくと。階下の呉服店では普段とかわらないお客さんとのやり取り、成人式の着付け合わせ。そう、その季節でもあるんですね。
(*「てぬコレ」...萩原、中村、のぐち、安藤氏等による新しい時代の手拭いを提案するプロジェクト)

生徒の落合さんは既にいて、1時半、黒田さんがこられました。そして次々に...
1時45分、萩原コーディネーター:『授業コーディネーターの萩原です。よろしくお願いします。あと7〜8人来る予定です。皆さん、初対面だと思うのですけど、思い切って隣りの人と話しをしてください(生徒...顔を見合わせ...ハハハ)。来た人同士、話しをするっていうのが「にわ大流」なので是非、よろしくお願いします。授業の後半では、飲みながら、食べながらで、もっと仲良くなれると思います。黙っていてもヘンなので、是非話しをして15分くらいお待ちください。よろしくお願いします(生徒...ワイワイガヤガヤ...)。』
時間もちょうど2時、まだ一部の方が来ていませんが、いよいよスタートです。

コーディネーターから雑誌「Discover JAPAN」の紹介。実はコーディネーター自らが執筆しているそうですが、「東京の秘密」というタイトルで多摩エリアとして、「東京にしがわ大学」のプレ授業からこの3ヶ月の授業の開催状況が紹介されています。次に本日、平行して行われている多摩市の「着ぐるみ」、立川での「自転車タクシー」の授業が紹介され、本日の予定の説明後、いよいよスタッフ紹介となりました。まずは着物に割ぽう着姿の古田飲食コーディネーター。料理の関係で先の挨拶となりました。ここ五日市の食材を使っての新年会の料理、また「きれ屋」さんで採れたサツマイモを使ったデザートがあるとか。最後まで酔っ払わずに...楽しみですね。ちなみに半襟(着物の襟)は中村先生の手拭いだそうです...さすが。続いて安藤先生の紹介となりました。

安藤先生:『えーと皆さん、はじめまして。にしがわ大学准教授の安藤です。まだ教授にしていただいていませんが...。(ウケてますよ)。ここ五日市は、遠い方は2時間ぐらいかけて来ていただいたかと思いますが、一本でずーっと新宿から都内へ繋がってる五日市街道というのがあります。今は面影がなくなりましたが、昔はこの後ろにある山の材木や雑木林の炭がここに集められて、大消費地である江戸に(秋川や多摩川、五日市街道を使って)運ばれた(幕末期には炭を運ぶ筏(いかだ)が2,000枚以上あったとか)という歴史的な土地であります。明治維新の頃は、自由民権運動が非常に盛んな所でして、五日市憲法という草案など(明治14年に深沢権八や千葉卓三郎等が中心となって起草。昭和43年に深沢家の土蔵から発見)もありました。この建物は120〜130年ほど経っていまして、元の持ち主は土屋勘兵衛(五日市民権運動の中心人物で"土勘"の愛称で親しまれた。【天保3.9.11〜明治40.2.4】)という名主ですが、そういう自由民権運動の話しもこの場所で当時されていたと思われます。その後、うちの初代がここを買い取りまして、呉服屋を100年ほどやっております。町並みなど、道の拡幅に伴いほとんど変わってしまいましたが、まだ古い建物が残っており、何とか残して、当時の五日市を見てもらい、楽しんでいただければと思っています。また着物に関心のある方がおられましたら、高い着物も売っていますので(またまたウケてます)、よろしくお願いいたします。』 

コーディネーター:『安藤さんは五日市出身っていうことでは...?』

安藤先生:『あースンマせん。僕はちょっと、もうだいぶ関西訛り抜けてしもーたんですけれど...。』(ちょっと見え透いたウケ狙いでしたが、皆さん大人です)
コーディネーター:『やーいやいや...。』
安藤先生:『生まれは滋賀県の彦根市でして、結婚してここを僕が手伝うようになって、もう20数年になります。まあ五日市も住んでみればいいところなので、気に入った方がおられましたら、お世話しますので、移住計画がおありのようでしたらいってください。』
コーディネーター:『ありがとうございます。ではまた安藤さんにはゆっくり手拭いの話しをしていただくんで...、じゃ中村さん、よろしく...。』

中村先生:『中村幸代と申します。ご存知の方もいるかと思いますが、今は「てぬコレ」の企画とか、デザインにかかわっております。にわ大のプロフィールを見て「ウェブ・デザイナーと手拭いのデザイン」って何だろうと思われた方もいると思いますが、元々は企業でウェブのデザインをやっていました。ある時、手拭いの魅力にはまりまして、その時にすごく心に残ったのが布絞りという昔ながらの柄でした。その布絞りのぼかし方に興味をもっていろいろ調べているうちに、すっかり手拭いの魅力にハマッてしまいました。今日は、デザイナーの方など多いかなと思いますが、印刷とはまたちょっと違うデザイン感覚が必要なので、私が手拭いをデザインするときに、どうやってデザインを考えているのかをお話しさせていただきます。きょうは楽しんでいってください。』

続いてスタッフの紹介となり、ニシヤマ、立川、野口の順で簡単な自己紹介。
コーディネーター:『にしがわ大学の授業を受けた方は何人くらいいらっしゃいますか...あっ結構いるんですね凄いな!2回目?3回目...。ま、他の授業のやり方と今日の授業が一緒かどうか分かりませんが、一応、全員の自己紹介をするのと、最後に全員で写真を撮ります...新年会っていうこともありますので。紹介のやり方としてはですね、一応30秒で...。では中村さん、最初に時計見ていただいていいですか。ということで心の準備は...皆さん、今日お持ちいただいた手拭いについて、まつわる話しでも構わないですし、どういう自己紹介でも構わないので...ではお願いします。』 (皆さん私(レポータ)よりもお若いようなので敬称は。○さん。と○くんでお許しを)

左から時計回りに下平さん(手拭いは好きで夏は毎日使っています)、林さん(「てぬコレ」で買った手拭い、2年ほど陽の目を見ていないので持ってきました)、歌さん(イラストリームやってます)、黒田さん(布、紙が好きでこのバック、畳の縁で作ってみました)、牧野さん(着物が好きになってから日々、手拭いを持ち歩いています)、小山さん(部活で汗を拭くのに使ってました)、三星くん(手拭いのデザインもしています)、釆(うね)さんと旦那さん(僕たちこの間、結婚式しまして、その記念に名前入りの手拭いを作りました)、金子くん(仕事柄、工場など見るのが楽しみです)、館野くん(シブ大で衣料循環ゼミをやっています)、宮腰さん(仕事のイベントで貰った手拭いを持ってきました)、澤井くん(かまわぬの手拭いの愛用者です)、森くん(海老蔵さんのを持ってきました)、山本くん(あまり手拭いって使ったことがなかったので...)、むろいさん(10年ほど仕舞い込んでいた一茶記念館の手拭いです)、落合さん(化粧品のデザインなどしています)、山田さん(柔らかい感じのもの...手拭いなど好きです、新年会もいいなと)、平川さん(子供たちと木の活字をスタンプして手拭いを作ったりしています)、田中さん(自宅と学校だけの生活から大冒険のつもりで参加しました)の順で、お持ちになった記念の、思い出の、そして身近な手拭いのエピソードなど交えて自己紹介と腕時計が一巡しました。続いてコーディネーターからも自己紹介があり、「つくし文具店」の手拭いについて、あえてプリントで作ったわけ、また剣道の面を被るさいに使うことなど披露されました。
(*「つくし文具店」...国立駅から歩いて20分、住宅街の小さな文具店。萩原氏が二代目店主)
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コーディネーター:『ということで、やっと本題の...まずは安藤さんの方から手拭いをどうやって作っているのかということで...よろしくお願いします。』

このレポート、私も工場見学と多少の体験授業かと思い(授業の告知文上では、あたかも染めの現場見学や染め体験が...)、工程を簡単にまとめれば済むと思っていたのですが、実はここから怒涛の36分間、延々と...。更に中村先生も12分に亘るお話しが続くことになりました。ううう...レポーター泣かせな...。えーい実況開始だ!(これでも随分まとめてみたのですよ)

安藤先生:『ではよろしくお願いします。あの、うちは呉服屋をずっとやっておりまして、60年ぐらい前から、ここの二階と奥の部分を一般に公開しています。それまではほとんど倉庫状態でしたが、地域のイベント絡みで、解放しようということでやりました。そうした中で、オリジナルのものを作ろうということで、地域のお祭りや商店の手拭いとかを作っておりましたし、気軽に出来るアイテムとして、「きれ屋」のオリジナルの手拭いを、3名のデザイナーの方々と作ったのが最初のキッカケでした。

6〜7年位前から手拭いがじわじわブームとなりましたね。その頃は古典柄以外の手拭いはあまりありませんでしたので、うちはちょっと今っぽい感じで作ろうということになり、あまり既成概念に囚われないような形の手拭いを作ってきました。

当初、浜松に、染めに出しておりましたとき、そこの職人さんなど、うちの手拭いを出すと結構喜んでいただきました...この手拭いなんかもそうなのですが。職人はすごく面倒臭がりです。すごく面倒臭い仕事ですけれど、出来上がったものが結構面白いものなので、その辺、楽しみながらやってくれていたようです。最近はいろいろなタイプの手拭いが出ています。そんなことで私は、手拭いを作る上での技術的なところについて説明させていただこうと思います。知らなくてもいいことかもしれませんが、少しでも技術的なことを知っていれば、手拭いを作りたいと思われたときに、いろいろな制約などを理解できると思います。そういうマメ知識として頭に入れておいていただければいいかなと思います。

最初に(2本の反物をテープルに広げる)、ちょっと呉服屋みたいですけれど(生徒、ウケる)、反物が出てきました。これは浴衣...両方浴衣なのですけれど...皆さん、浴衣と手拭いが同じものだということを知らないと思いますが、実はほとんど同じものです。工場(こうば)も同じ工場で、腕のいい職人さんが浴衣を担当していたりはしますが、全く同じ所でやっています。染め方としては「注染(ちゅうせん)」という染め方です。この二本の浴衣、同じように染めるのですが、こちら(すすきと萩に蜻蛉柄)が注染で、そちら(柄は?)が長板染めという染め方になります。(←先生に問い合わせするも回答いただけず)

まず向こうの長板染めでは、だいたい6m以上の板を使い、まず布を板の上に表から裏に通して12mの一反の反物を張り付けます。その上にこれくらいの型紙を当てながら糊を順繰り、順繰りに置いていき、全部に糊を置いてから、色を染めます。そうすることにより細かい柄が出来ますが、糊の置き場も染め場もすごく場所をとります。長い間、ほとんど型染めはこうしてやっていました。明治の頃になると科学染料ができまして、大阪の方で、注染という染め方で染められるようになりました。これ(すすきと萩に蜻蛉柄の反物)、よく見ていただきますと、こことここ(布を折り重ねて)が同じ柄になっています。実はこれ、こういうふうに(布をさらにジグザグに重ね)柄が重なっています。この巾がちょうど型(デザイン)の大きさでして、このサイズの型紙を作ります。そしてこのように布を重ねて染料で染めます。

すんません(アンチョコ見ながら) 、准教授なもんで...。(すすきと萩に蜻蛉柄の反物をスルスルと巻きとり、代わりに紫地に白抜きのモンステラ柄の反物を出す)これは染め上がって来た状態の手拭いです。まず丸い反物に糊を置くのですけれど、まずここにこう糊を置いて、次にこちらからこう折り返して、また型紙を当てて糊を置いて、返して...。そうですね。こういう形で(糊置き現場の写真のパネルを回覧する)糊を置いていき、これ(布のジグザグ重ね)を繰り返します。この繰り返しをだいたい25枚から40枚ぐらい重ね、これに染め場で染料を注いで染めます。ちょっと皆さんがいだいている「染め」のイメージとは違う染め方をします。これは特殊な染め方で、こうすることによって省スペースで糊が置け、染めることが出来るので、大量生産も出来き、明治以降、一気に拡がりました。

今、大まかにお話ししましたが、まずは手拭いを作るときには型紙を作ります。型紙はこういうもので(こうもり柄の実物を筒から出して)、これは美濃和紙に柿渋を塗り、それを何枚か重ねて燻(いぶ)したもので、すごく丈夫なものです。これは浴衣、手拭いに限らずみんな型紙は一緒なのですが、需要の減少により、最近はセルロイド系の型紙も結構、使われるようになってきています。で、この紙に小刀で型を彫り、これを生地に当てて上から糊を置きますと、ここの型紙の下から糊が生地に付き、そこが柄になるわけです。柄といいましても、その柄の色を付けている感覚ではなく、白くするところの為に型紙を使います。柄にならないとこに糊を置くという形になるので、その辺が少し分りにくいかと思います。この型紙はですね、伊勢の白子(しろこ、三重県鈴鹿市)という地域がありますが、そこでほとんどが彫られています。東京にも一部型紙彫り師さんはいますが、ほとんど京都の染物にしても、江戸小紋にしても型紙はそこで彫られています。その白子に集中していますのには理由がありまして、江戸時代に藩が型紙彫りを奨励したことによります。そしてその彫った型紙を型屋さんが全国に売り歩きました。当時の伊勢、紀州藩は、御三家のひとつでありましたので、特殊な通行手形が出せたようで、全国を津々浦々廻りながら型紙を染め屋さんに売ることができたようです。またそれは型紙を売るのと同時に、各地の情報収集の役割を果たしていたという部分もあり、結構藩のバックアップがあったようです。

皆さん、染物というと京都など、ある決まったところで、やっているイメージあると思いますが、実は昔、この辺でも...ここを入ったすぐ先の「岡崎」さんや、その裏にも「泉州屋」さんという染め屋さん...五日市の町にも三軒ぐらい染め屋さんがありました。ほとんどそれは「紺屋(こんや)さん」といいまして藍染をしていました。そういうところの人が型紙を買い、お客さんから注文を取ってその型紙で染める...今でいうアツラエですね。逆に昔は既製品がなかったのでこうしたアツラエが普通で、このように全国に染め屋さんがあり、型屋さんが型紙を持って廻られていました。

うちの「きれ屋」の手拭いなども、まず最初に型紙になるかどうかという...例えばあまり細い線や小さな丸だとかは表現出来ないので...その辺の調整をしながらデザインをします。後ほど、糊についてはお話ししますが、そうした細かなデザインがあると型屋さんから「これでは出来ない。」と言われます。わりとこういう(手拭いを手に、柄を指し示して)、ゆるい感じの線とか点になっているのがそういうことになります。

次にですね(またアンチョコ確認)、手拭いを作るのには型紙が必要なのと、染める染め屋さんが必要なのと、そして生地があります。これらは皆、分業です。最近は染め屋さんがまとめ役をしていることもありますが、以前はほんと型屋さんは型屋さん、染め屋さんは染め屋さん、で生地屋さんは生地屋さん、そしてそれらを手配する人がいて、コーディネイトしながら行っていたというのが昔からの日本の染織という世界でありました。今でも染め屋さんが表に出てやっているところは少なくて、「かまわぬ」さんにしても、何軒かの染め屋さんに仕事を振ってやっていたり、染め屋さんがブランドを出しているところはなかなかいかないようです。うちなども、「てぬコレ」を通して染工場(せんこうじょう)に何回か行ったりして、結構現場に近いところで、ものを作るようにはしておりますけれど...。

次にこの型紙(またまたアンチョコを確認しながら)、染工場に行きます。注染では型紙で白い部分に、先ほどのように折り重ねながら糊を置いていきます。工場にはこうした糊を置く場所と染める場所があり、糊を置く人はずっと糊置きばかりをしています。去年の春頃に大阪の注染の産地に行ったときも、70近いオジサンが、ずっと朝から晩までそれこそ何百枚も糊を置いているそうで、未だにやはり緊張するとのことでした。手拭いの場合は、多少糊がズレたりしてもOKなこともあるのですけれど、浴衣の糊置きの場合は、その中の一枚でも変な糊の置き方しただけで、結局一反が駄目になってしまうので、長年やっている人でも、大変緊張するといっていました。

で、その糊なのですが、糊は米ぬかやもち米、海草などを混ぜ、それに石灰や塩を入れ、それをこうこねて、すこし粘り気のある糊を作ります。この糊のところが染料は染まらないので柄になるわけです。そんな感じでちょっと泥みたいな感じの糊なのです。今から40〜50年ぐらい前、浴衣や手拭いが本当に一般的だった時代は、当然、大量に作っていたので、染め上がって、洗い流しますと、その糊はものすごい量でした。それが全部排水でそのまま川に流していたので...今のように「公害」などといわなかった時代は...東京の八潮の辺りは、広範囲に水はヘドロみたいになってしまい、全国でワーストツーといわれるぐらい川を汚していました。最近はそういうのが非常に厳しくなりましたから、今はしっかりと浄化槽を設備し、水質検査もするようになり、設備無しでは旧来の染めは出来なくなりました。都内でももう数件ですが、そういう設備投資をしてでもという注染の染工場が残っています。今日ではほとんど、産地は静岡県の浜松と大阪の境の方の毛穴(けな)というところがありますが、その辺りに集中しています。そういうところでは浄化は完備し、神経を使いながらやっています。

で、すこし話しが戻りますが、その重ねた布をちょっと、2〜3mぐらい離れたところの染め場の方に移し、重ねた状態で上から薬缶といわれるジョウロみたいので、染料を注ぎます。で、下からバキューム...ちょっと小さいので、遠くの方は分らないと思いますが...これ(写真のパネル)廻してください。染料を注ぎながら下から吸引をして染料をダーっと流します。それをもう一回裏返して、同じ作業をします。染めの加減は、最初に色が落ちてきた方と真ん中の辺り、下で微妙に違ってきます。その辺はもう職人さんの長年の勘でやるのですが、そのムラのできたりするのが注染という染め方では、普通の染めのものに比べては出来やすいですね。皆さんその辺は理解されていたので、手拭いの場合はそういう染めでも通っていました。昔は手拭いって配りもので、ただで貰ったりすることが多かったのですが、最近は千円、二千円だして買われる方が増えて来ましたね。昔みたいな仕事では通らないので...いい加減にはやってはいないのですけれども...その辺は不出来品をはねる割合が、昔に比べて凄く増えてきたそうです。

手拭いは染料で染めるのですけれども、今は反応染めというのがわりと一般的です。少し前は硫化染めという染め方やナフトールで染めたりとかでした。それらは染料そのもののズバリの色ではなくて、空気中の酸素で酸化して色が定着するという、そういう染料を使うので、微妙な色はほとんど職人さんの勘に頼って色をだしている形になります。同じ手拭いを追加で染めに出したときに、微妙に色が違っていたり、微妙じゃないくらいに結構色が違っていたりとか(生徒...フフフッ)いうこともあります。「てぬコレ」の手拭いなんかもプリンタで印刷した原画を染屋さんに送るのですけれど、結構ブレが激しいですね。その辺、細かく指摘すると、「じゃ他でやってくれ」とスグに職人さんが言うので、最初から、ある程度覚悟しながら、出たとこ勝負でやるつもりでいないと...あんまり神経質になると、ちょっとナイーブになってしまって...。また「てぬコレ」に関してはデザイナーやイラストレーターの方、特に色にはスゴイうるさい方が多いんですね。ですから最初にその辺をある程度納得していただいた上で作るようにしています。それでもどうしても納得のいかない方がたまにおられます...ここにおられる方が(どなたか苦笑い)...あまりに違い過ぎる場合などでは染め変えたりとかすることもありますが、ほとんど染め屋さんはやってくれません。数が多い場合は試し刷りをしてくれることもありますが...。

染料を染めた後に水で洗い流して出来上がりなのですが、浴衣は仕上げにノリを付けてビシッとしますけれど、手拭いの場合はシワを伸ばして出来上がりです。手拭いになる前はこういう長い反物の状態で来ます。それが最初の形のように折りたたんだもので、ちょうど今朝届いた中村(先生)さんのこの手拭いなのです。こういう状態でドカッと来ますね。これはもう両端を切ってあるものですけれど、「切らないで」って言えばこういう長い反物の状態で届きます。まあ、こんな感じで手拭いを作るわけです。

これは(千筋に雪輪紋の反物を広げて)江戸小紋、気に入った方あれば買ってもらっていいのですが(生徒さん...ギャハハ高そう!)...、凄く細かい柄が出ていますよね。これも同じように型紙で糊を置いて、糊のところが色が染まらないというものなのですね。そこまでは手拭いと同じように染めるのですけれども、これはさっき言いましたように型を順繰りに並べて置いていくので、その型を置いた通りの染めになります。それも、少し固めのエッジが立つような糊でやります。それに対して手拭いの場合は(中村先生が隣で「北の国柄 by てぬコレ」手拭いを広げて)糊を置いた上に、こういうふうに布を折り重ねますよね。重ねてまた同じところに糊を置きますから、布が重なって糊がつぶれて、そこからまた同じところに置くので、糊がつぶれます。なので最初に置いた型紙の形よりもどうしてもつぶれた感じになります。そういうことなので、この江戸小紋の方は、裏はこう、柄がありません。表から黒を染めている柄だけなのです。裏は染まらないのですね。それに対して、手拭いの方は両方から染料を流しますから、両方から色が染まります。手拭いはそうやって糊を置いた上に布を重ねてまた糊を置くので両面に糊が付いた状態になって、それによって白く、こういうところが両方ぬけるわけです。だから手拭いはよく見てみると表裏がありません。これが注染で染めたもの(手拭いを指し示して)なんですけれども...で先ほど見せていただいた皆さんがお持ちになった手拭いの内、何枚か...萩原さんのもそうだったのですけれど...表側だけに柄があって、柄のない裏のあるものがありました。その手拭い、そうですね。それはこの注染という方法じゃなくって、捺染(なっせん)という方法で、シルクスクリーンのプリントで作ったものです。その方法では、シルクスクリーンを置いたらその上から顔料を引いて、色そのものを付けて柄にしています。そうすると表側にしか柄が付きませんから、裏が真っ白になります。ですから細かい柄とか、何色か重ねたいときはそういう方法になります。

それともうひとつよく手拭いで「この柄、出来ないよ」と言われるのは、色なんですね。色は、イラストの場合は自由に色と色を隣り合わせて表現出来ますが、手拭いの場合はそれが出来ません。というのは、染料をジャーっと注ぐので、例えば...出来ないと言っておきながらこれは出来ているのですけれども...出来るにはちょっと訳があります。これは(「うれしさいっぱいbyてぬコレ」手拭いを手に取って)黒のところに白の柄があって赤い柄もありますね。これは、黒を注いで染めて、更に赤を注いで染めると、ここは色が混ざってしまいます。手拭いはこのように違う色を染める場合は必ずここに白い部分を8mmから1cm残しておかないといけないのです。ですからここに糊の土手を作って...さっきの写真はちょっと薄くて多分分らないと思いますが...この部分、この部分にポコポコとなっているこういう土手を作って、そこに注いだ染料が外に流れ出ないようにするやり方をしないと、違う色を染め分けられないのです。でも、一回の工程で違う色が何色も染められる、そこが面白いところなのですけれども、そういう約束事があるので、必ず複数の色で染める場合には、ここのように、「白い部分を付けてくれ」と言われます。でもどうしても「それはヤダ!」とか「くっ付けたいんだ!」という場合は、こういうふうに(別の「二兎の雪うさぎ by てぬコレ」手拭いを手に取って)「ぼかし」にします。ここは色と色が隣り合ってくっ付いていますね。これは土手を置かないで、染料をザーっと流して...ま、ちょっとした土手を置くのですけれども...このようにくっ付けるような感じにするのですが、これは職人さん、凄く嫌がりますね。あの...というのは、ここのぼかした色の部分は、お客さんのイメージしている色とは違う色になりやすいんです。例えばブルーとオレンジを混ぜたら...何になるのかな?緑っぽくなるんでしたっけ?絵の具の混ざり方と、染料の混ざり方と全然違いますので、ちょっとくすんだ色になったりします。ので、職人さんはぼかしを凄く嫌がります。場合によっては「出来ない!」と言われてしまうんですが...これなんかも、ぼかしが「多少汚くなっても平気ですよ」って言ってお願いしないと、職人さんはやってくれません。僕らが見て、「全然OKや」と思っても、職人さんが見ると「こんなに汚い仕上がりになって...」と言う場合があるので、ぼかしについては結構断られる場合が多いです。ということで、こういう形にすれば、隣りどうし違う色も可能にはなりますが、基本的には必ずこういうように白い枠をとったデザインしないと、これは作れないんです。その辺、作る工程を知っていれば理解できるのですけれども、最初から職人さんに「出来ないよ」って言われてしまうと、「何で出来へんの」っていうことになるんですね。その辺がよく手拭いの色を染める場合に「出来る」とか「出来ない」とか言われるんですね。えーと...。』

コーディネーター:『生地、生地の話し...。』
安藤先生:『あっそうか、生地ね。生地の話しなのですけれども、手拭いの生地はそんなに多くなく、4〜5種類ぐらです。「てぬコレ」で使っているのは「総理(そうり)」といわれる生地で、大阪の方では「文(ぶん)」ともいいます。糸が太くて、わりとザックり織った感じです。手拭いは両脇が「みみ」なのでほつれませんが、上下の端はほつれちゃいますね。この小幅木綿というのを使う民族は日本人ぐらいで、日本でしか流通していません。更にこんなのを使うのは浴衣か手拭いか、晒し(さらし)か...最近はどれもあまり使われません。なので、外国でほとんど作ってはいません。知多半島の「知多」というところに、工場がありまして、それこそ初期のころの自動織機が何百台も置いてありまして、そういう織機で織っています。だからほとんど、この手拭いの生地は日本製なのです。両脇がレーザーで切ってあったりする中国製のものもありますが、「みみ」になっているものはほとんど日本製です。うちで使っている「きれ屋」の手拭いは、ちょっと滑らかな感じにしたいので、それは「特岡(とくおか)」という、ちょっと糸が細くて、わりと細かく織った生地を使ってます。その辺もまあ好き嫌いで、ちょっとザックリした感じにしたい場合はこういう「総理」を使えばいいですし、滑らかな生地を使えば、滑らかな感じになりますね。

やはり職人さんが全部染めるわけなんで、こちらの思っているのとは違う感じになるときもありますね。特にぼかしの場合は、ジョウロでこのように注ぐんで、結構キレイにぼかしが出来る場合もありますが、パソコンのプリンタでやったようには出来ないんです。これが(青地に飛行機雲が斜に入っている手拭いを持って)ですね、僕的には凄くキレイに出来ていると思うんですけれども、ぼかしです。実は青色の染料を4色、使い分けてぼかしをしているのですけれど、ここから下は3色使っています。この辺の薄い色同士のぼかしは凄くキレイに、自然な感じになっていますが、ちょっと濃い色からこの部分の差がどうしても大きいので、やはりちょっとぼかし切れてはいません。でも、僕はこれ、全然キレイだと思ったんですけれど、オーダーされた方が「パソコンのと全然違う、やっぱこれじゃダメ!」と言われたので、結局これはぼかしではなくて、ベタのその...こういうように変わってしまいました。私はあのぼかしの方がね、全然キレイやと、「これぐらいええやん」と思いますけれど、まあ、自分で作るぶんにはいいんですが、お客さんに頼まれた注文の場合は、その辺を最初によくことわっておかないとトラブルになることもあります。ぼかしは非常にその辺、上手くいけば凄くキレイなのですけれども、微妙にイメージと違ったりする場合が出てきます...そんなことがあります。まあ、いつも出来上がってくる時に、一番心配なのは色で、送って来たものを開けた瞬間、凄くキレイに仕上がったというのもありますし、「うーん」ッていうのもありますけれど、ま、その辺はもうしかたがない、段々とそれを好きになるような...ふうに自分の気持ちを変えていかないと、上手く付き合っていけない部分がありますね。もし手拭いを作ろうという方がありましたら、その辺は考えていただいて...。

で、浜松の手拭いは130枚位、そう十反からという感じで染めてくれます。結構それでも職人さんはその手拭いのために色を作ったりしなければいけないので、数が少ないとどうしても面倒臭がりますけどね。今日はそちらにも手拭いを作られた方がおりますけれど、わりと気軽に作れるアイテムなので、皆さん、オリジナルの手拭いを作ってみるというのも面白いかなって思います。えーと僕の話はそんなところです。あとは中村さんの方にお願いして...。』
コーディネーター:『かなり安藤さん、しゃべったので...多分、質問もイッバイあると思うんですけれども...』
安藤先生:『あ、スイマせん。30秒で終わるつもりでいたんですが...スンマせん。』
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中村先生:『では、代わりまして私の方は、デザインをする上でどういったプロセスを経て、作って行ってるかというのを説明したいと思います。まずそのプロセスをザックリと5分ぐらいで説明したあと、今日は、使い方を楽しみにされている方もいると思いますので、作ったことがある方もいるかもしれませんが、このようなワイン...ビン包みと、プレゼントを包む包み方を...。皆さん、ご自分で持って来た手ぬぐいを使って是非やってみてください。楽しいと思います。
あの、私の手拭いのデザインなんですけれども、この...(展示作品を指して)植物とか動物をモチーフにしてます。その裏のもそうなのですけれども、よく「北欧っぽいデザインだね」と言われるんですけど...もちろん北欧のデザインもとても好きなのですけれど、やはり日本の、もちろん日本画であったりとか、焼き物であったりとか、着物の柄とかもよく参考にしています。植物と動物の柄は、こういうふうに決まって、一応、私の手拭いとしては「お願い手拭い」というテーマにしています。それって何?って思われますが、昔ながらの文様には吉祥文というものがあります。お目出度いことを、縁起を担いで、いろいろな...例えば動物に願いを込めて文様にしているのが吉祥文なのですけれども、鹿の柄は、これは不老長寿、健康を願っています。何故健康なのかといいますと、日本では昔から鹿の角が、漢方の薬に...ちょっとなんか健康にいいとか、長寿になるという効用があるので、そういう意味で長寿として、この鹿の柄を選びました。例えば奈良の春日大社などでも大切にされていますね。そうしたことから、こうした動物とか植物をテーマにして、願いを掛けています。いろいろなお願いがありますので、もし気になる方がいたら、「この手拭いの願いは何ですか」って後で聞いてください。一応、今は10柄ありまして、私の願いとしては108枚、煩悩の数だけ、生きている間にデザインをしたいと思っています。是非見守ってください。
(※各神社にはそれぞれ眷属(けんぞく)っていうのがありまして、その神社の主祭神にゆかりのある動物が決まっています。
伊勢神宮はニワトリ、出雲大社はヘビ、石清水八幡宮はハト、北野天満宮はウシ、熊野大社はカラス、他にもサルやカメ、ウサギやキツネ等があります。そして奈良の春日大社はシカです。)

で次に、普段、私は、このような白い枠のある紙(A4のコピー紙)を常に沢山プリントアウトして用意しております。
ちょうど手拭いのサイズの34cm×90cmを縮尺したものなんですね。これを常日頃、家中に置いておいて、パッと思い付いた時に、軽くメモしたりスケッチ出来るようにしています。で、これらから...何となくこう図案が出来上がってきたのが、このような状態(テーブルにデザインのサンプルを並べて)なんですね。で、この柄のベースとなったのはこれで(下書き段階のラフな図を手に取り)、図案はかなり粗いです...よかったら廻してください...最初は鉛筆画で、ガーっと描いてしまいます。多分皆さんは、実物大で描いていると思われたかもしれませんが、私は、スキャニングして取り込んで、「イラストレーター」というソフトを使って図案を描いています。結構、そこで図案が大きく変わったりとか、色を調整したりとかしていきます。ここにいろいろありますが、色パターンは最低でも20パターンは出してみます。ちょっとしたワンポイントの色が少し違うだけでも、雰囲気は変わってきますので...あッこれよかったら廻してください。例えばトンボの、この図案ですと、トンボのワンポイントの色が違うだけでも、夏っぼくなったり、秋っぼくなったりとか、全部作れたらいいのですが、そうもいきません。今日は、デザイナーの方もいるので、その辺はご存知の方も...納得がいくまで徹底的に色を出します。もう自分でもどれがいいのか分かんなくなるようなときもあるのですけれど、そういう時は修さんとか野口さんに聞いて、「どれがいい?」っていうふうにちょっと教えていただいたりすることもあります。

これ、見えますか?ラインが引いてありますけれども、これは何かというと、折り線なんですね。手拭いって、このように伸ばして普段、見るものですね。けれども、買う時って、多分このようなサイズにたたんであると思います。
ちょっと商業的な話しになりますけれど、ここの部分が売り面になるのですね。ここにどんな図案が来るかで、その売り上げが大きく変わってしまいます。そこで、どこの図案が出てくるかを、こういうふうに線で当たりを付けて、計算をして、外れていれば、図案ごと変えたり、そういうこともします。これは凄くよくあること...まあ、デザインのポイントかと思います。それからたたみ方ですが、「てぬコレ」のたたみ方は細長いので、ちょっと特殊なのですけれど、普通は手拭いの折り面っていうのはこのような感じ(テーブルの上で「北の国柄 by てぬコレ」手拭いをたたみながら)が多いと...これで、こうたたみます。このようにたたまれていると思います。この時の折り面は表面はここで、裏面の折り面はここになり、この二柄しか見えません。なので、ここにやはりポイントを持ってくるというのがデザインをする上では凄く大切なのかなと思います。

こうしてパソコンの上だけで作っていますとスケール感がどうしても分らなくなってしまいます。実際にパソコン上では細かく画けて、よく出来たなと思っても、実際のサイズになったときは、ガラッと印象が変わることがあります。そういうときは制作途中で、色を付ける前に実物大をこのように出してみます。出してスケール感を自分の中で掴んだ上で、最後に色を、カラーパターンを出してみます。

やはり一番難しいのは色の付け方なのですけれども、色と色を隣り合わせにすることが出来ないので、本当にいつも苦心をしています。これは職人さん泣かせの柄だったのですけれども、これはあえて図柄を、ちょっと氷結という感じの図案なのですが、ここのこの部分に全部糊を置いていただきました。全部置いていただいて、更に中に、ぼかしを入れたいと言ったら、最初は「これは出来ない」ってやはり言われました。ここの色と色の土手を置く部分、糊の土手を置く部分を1.5cmはないといけないと。実は最初のデザインでは、これ、幅はなかったのです。1.5cmかということなので、ギリギリのところで調整をして、これで、お願いしましたね。』
安藤先生:『いつも...いつもそうですね。』
中村先生:『いつもそうですね。でも、出来上がった手拭いは今まで作った中で、技術的にも、自分の納得度的にも、これはかなり良かった作品だったかなと思っています。もしよければじっくりと...こちらの方に置いておきますので、見てください。このようにデザインの方をしています。ある程度、図案が出来たら安藤(先生)さんにチェックをしていただいて、安藤さんの方でも染工場の方にチェックしてもらって、染め上がってくるまでに1ヶ月ぐらいかかります。ただ正月や夏とかは、祭りとかがあるので、もっと時間がかかる場合もありますね。最低40日はかかると思った方がいいと思います。印刷で言ったら、1日で出来てしまう世の中ですから、ものすごく時間のかかるものだと思いますけれど、出来上がったものは凄く感動します。是非皆さん、チャレンジしてみてください。私の方は、デザインのポイントについて、以上になります。』

コーディネーター:『ありがとうございました。続きまして...箱を...箱がですね(大きさが)バラバラなんで...。皆さん好きな箱を取っていただいて、あの、包み方をちょっと挑戦を...。』
野口サポータ:『これも?』
コーディネーター:『うん、デカすぎる?』
野口サポータ:『凄い!』
中村先生:『巻けないかもしれない...。』
コーディネーター:『でも、あえて挑戦。』
中村先生:『あえて挑戦...ね。...あの、では皆さん、自分でお持ちになった手拭いを拡げて(先生は「北の国柄 by てぬコレ」手拭いを広げながら)、準備してください。あまり大きい箱は取らないように...(生徒、ウケる)、チャレンジされない方は、ちょっと小さめのをお願いしま〜す。

こういう形にして...(テーブルの上に手拭いを拡げて)こちらでやっていきますね。ではまずは、端のほうがこのように、切れっ放しになっているので、これを隠すために折ります。両端、(3cmほど)折ってください。あまり場所がないので、お隣りと協力して...。ハイ、そしたらちょっと、こう(箱を手拭いの中央に置く)、少しどちらか右でも左でもいいんですけれど(箱の位置を左にずらす)...そうしましたら、この箱、こういうふうに包む(上下の布で包む)ようにしてください。ハイ。そうしましたら次はですね、まずここの(右側の短い方の端を束ねるようにして立ち上げて持ち)少し余ったのを、頑張って処理をしていただいて...(生徒...処理!処理して?ギャハハハ)キレイに、ここがキレイになるように、ハイ。キレイになるように持ってきてください。少しこう、ここは摘まむようにしてください。そしたら、今度は長い方の布端を持っていきます。そう上に持っていきます。(生徒さんの出来を見て)凄くキレイですね。ここまで持ってきましたら、ここを(右側の摘み上げている方)クルッと巻いてください。好きなように巻いていただいて構わないです。巻いたらここの輪の部分(一周巻いて出来た輪)、この輪の...ここに輪が出来ていると思うのですけれども、出来てない人がいたら困っちゃいますが、ここの輪にこの長い手を入れます。中に入れちゃいます。このような状態になりましたか?(生徒のひとり...ダメだ)だめな場合はもう一度やり直してもらって...あの上手く出来た人は上手く出来なかった人に教えて上げてください。そうしましたら...最後に、最後にここを(最初に折り返した両端の部分)ちょっとこうバラしてあげると...花のように...。この包みのポイントは箱の大きさです。適当な大きさの箱で作ってください。上手くできましたでしょうか。ちょっと時間が押していますので、すいません、ビン包みをやりますので(「睡蓮と象柄 by てぬコレ」の手拭いを広げて)...あのビンが、全員の分はないので、これは私の方でやります。後ほど、じっくりと教えてほしい方は、おっしゃってください。ジュースとかペットボトルを持っている方はご一緒に...結構サイズは、わりと大きいビンまで出来ると思います。同じように折りますけれども...サイドは片方だけで大丈夫です。そして、あの、ちょっとこれも少し上を...このようにビンに被せます。ちょっとこの部分を少し折る程度でいいのですけれども...そしたら、あとはビンを包むように、向こう側の布を取り込みまして、ちょっとここを折ってもらうとキレイにできます。ちょっと私の出来は上手くいっていませんが...このような...このように...包まれます。そうしたら、布をかけていただいて、この折りの布が上の方に...、そっちの方向にクルクルと巻いてください。そうしたならばビンの口の所で布をクルっと巻いてもらって...ちょっとバラけたのはあの、処理してください。こんな形でビン包みができました。これでワインなんかプレゼントなんかすると喜ばれますので、ためしていただければと思います。ありがとうございました。』
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コーディネーター:『皆さん!上手く出来たでしょうか。あの、そろそろお待ちかねの新年会に突入したいと思います。』
みんなで新年会なので準備もみんなでということで、手分けして一階奥のカフェでの盛り付けから、急な階段を手渡しで二階へ。10分ほどで座敷のテーブルに料理が並びました。
コーディネーター:『じゃ皆さん!ちょっと集まってもらっていいですか。料理の説明を古田さんから...お願いします。(皆さん、板の間のテーブルの周りに...)』
古田さん:『ハイ、手拭いで「茶巾絞り」です。まあ、ぶっちゃけサランラップでも出来るんですが...こう、手拭い...これは「手ぬこ」っていって、手拭いの三分の一のものなんですが...まあ大きな手拭いでもいいんですけれど。このように広げて。今回はサツマイモを茹でて潰して、シナモンと砂糖を入れただけです。これだけでもいいんですけれど、ちょうどイチゴがあったので、それを入れてみようかなと。あまり甘味がないので、これで酸味と合うんじゃないかな。こんな感じで...こう絞って、イチゴが見えなくなって、更にクルクルクルッと...。そうすると、こんな...。』
生徒:『かわいい...。(パチパチパチパチ...)』
古田さん:『この絞りの風合いっていうのは、手拭いならでわですね。...こんな感じでした。(生徒...ガヤガヤガヤ)』
コーディネータ:『ハイ、ありがとうございました。じゃあ皆さん! 席の方に着いていただいて...。(皆さん、ぞろぞろと移動)』
古田さん:『じゃあ、メニューの説明...ちぎりコンニャクで、これが柚子味噌です。これも五日市のものみたいなので、これを付けて食べてください。これ、もう出ているトマトです。これは聖護院大根(しょうごいんだいこん)で、カブみたいに凄く大きな大根とニンジンとセリの生酢です。これが野良坊菜(のらぼうな)っていうここら辺の特産...名産の、菜の花のもうちょっとやわらかい感じの...なっぱです。それに油揚げを醤油であえています。こちらが春菊とニンジンの白あえです。でちょっと擦り胡麻が入っています。これが白菜と豚バラと椎茸のニシ煮です。柚子醤油入れてください。で、もうひとつお鍋があって、その中にはホウレン草も入っています。これが八つ頭で...これも柚子味噌で食べてください。まあ、新年っていうことなので八つ頭とか生酢とか、縁起ものを作ってみました。以上。(全員...パチパチパチ)』
コーディネータ:『じゃ日本酒を三星さん、注いでもらっていいですか。これはあきるの野の「喜正」...。』
(*喜正(上撰本醸造)...秋川渓谷の地酒、安藤先生からご提供いただきました。当然1本で足りるわけもなく、2本目は「喜正しろやま桜」(吟醸酒)、会の最中にわざわざ近くの「ひらの屋」さんまで...ありがとうございました。2本共、本当に美味しくいただきました。)
コーディネータ:『一応乾杯の挨拶を一番奥の、その真ん中の、ハイ(年長者とお見受けした澤井さんをご指名)、乾杯の挨拶お願いします。』
澤井さん:『澤井と申します。ご指名でございますので...あの、ひとこと。えーと本日は授業の方、楽しく拝聴させていただきました...。』
コーディネータ:『まだこれからも授業です...。』
澤井さん:『そういうことです。えーと、安藤先生と中村先生、ありがとうございます。またスタッフの古田さん、立川さん、ニシヤマさん、のぐちさんと萩原さんと、ありがとうございました。また「にしがわ大学」がどんどん盛り上がっていくようにですね、みな仲良く、引き続きですね、顔見知りになって、どんどん広がって行くような大学にしていきたいなと思っておりますんで...皆さんで乾杯、お願いしたいと思います。それでは「乾杯!」。(全員...カンパ〜イ!パチパチパチ)』
 かくして新年会は和気あいあいのうちに一時間が過ぎ、コーディネータより挨拶があり、宴もたけなわではありましたがお開きのお時間となりました。皆さんそれぞれに話しに大いに盛り上がり、美酒と心のこもった手料理で幕を閉じました。これにて「新年に 手拭いを 作りたい 使いたい」&新年会の授業は無事に終了いたしました。目出度し、目出度し。
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私、レポータは長く高円寺阿波おどりで笛を吹いていました。お祭りには手拭いが欠かせません。晒しを巻いて浴衣着て、頭には手拭いをきりりと鉢巻にして...今回はお祭りの手拭いのほかにいくつか持参したその中のひとつ「2016年オリンピック招致」手拭いに安藤先生が...『東京オリンピックの招致の手拭い、これどうしたの?これ、東京都で作ったんでしょ?』と。私はすかさず『オリンピックの招致イベント茶会が浜離宮であったとき、たしかその時にもらったんです。』。安藤先生は『なるほどなるほどね。うちでこんなの出来へんかなって思って営業に行ったんですよ。そしたらこれ見せられて、もう作ってますって言うて。何んでプリントでやるんかなって思って...ね。』と。私も同感で、『そうですね。日本の伝統的なもので、ね。』。安藤先生『ねえ。まして東京にもね、注染の染め屋さんはあるんだから、地場のところで染めて、やればいいのになってね...。』...まったく、まったく。
他にも澤井さんから:『会社の先輩で日野の立川さんていう人、いるんですよ。立川○○さんていうんですけれど...。
60半ばぐらいの...。』とお話しいただき、私:『そうですか...。日野の立川は親戚関係が多いんですが...。』と曖昧にお答えしました件、帰宅後に実家の母に聞きましたら判明しました。私の祖父の弟の次男に当たる者でした。何か「つながり」の一端を見たような。これからも「にわ大」を介していろいろなつながりが発見できるのが楽しみです。 楽しくレポートを書かせていただきました。最後までお読みいただき本当にありがとうございました。実際の授業のどれ程をお伝えすることが出来ましたでしょう。いささか自信はありませんが、いい経験をさせていただき、ありがとうございました。

(20,000字達成です。やった!)



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●テーマ:
「てぬぐい」のつくり方とつかい方を学ぶ
 

●対象者:
「てぬぐい」に興味のある人、古い建物と畳と新年会が好きな人
 

●授業について:
「てぬぐい」を日常的に使っている人を見かけることが多くなりました。
江戸時代から使われてきたてぬぐいですが、単に昔を懐かしむのではなく、
コレカラの暮らしの中で使いたくなる「てぬぐい」は、
どんなものなのかを考えてみたいと思います。

この授業では、
知っていそうでよく知らない「てぬぐい」のつくり方や
現代の暮らしの中での「てぬぐい」のつかい方などにふれ、
自分と「てぬぐい」の関係を考える機会にしたいと思います。

先生は、栗原呉服店4代目の安藤 諭さんと、
てぬぐい好きがこうじて、てぬぐいのデザインをはじめた
ウェブデザイナーの中村幸代さんのふたり。

てぬぐいの柄を、どうやってデザインしているのか、
そして、「注染」という技法は、どういうものなのか、
さらに、どんな時に、どんなふうに「てぬぐい」をつかうのか、
などなど、素朴な疑問に答えながら、すすめたいと思います。

会場は、武蔵五日市で100年以上続く栗原呉服店内に、
03年にオープンした「きれ屋」。
古い木造の建物の2階の板の間と畳の部屋を使って、床に座って
ゆったりとした時間を過ごしながらの授業です。

新年、はじめての授業なので、授業の後半には、
少しだけお酒と、食べ物を楽しめる時間をもうける予定です。

「てぬぐい」と過ごす150分
新年会気分で、着物で参加するのもいいかもしれませんね。

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●授業の流れ(予定)
13:30 受付開始
14:00 はじめに 全員自己紹介
14:20 安藤諭さんから「てぬぐい」のつくり方についての説明
14:40 中村幸代さんか「てぬぐい」のデザインにていての説明
15:00 ふたりから「てぬぐい」の使い方についての説明
15:20 新年会に突入。飲みながら食べながらの質問タイム
16:20 まとめ 記念撮影
16:30 終了

 
●注意事項
「てぬぐい」を1枚ご持参ください。
もっていない方は、きれ屋で購入することもできます。(1050円〜)
筆記具、ノートなど必要に応じてご自身でご用意ください。

 
●重複応募は無効となりますのでご注意ください。
また、授業の参加エントリーには、学生登録が必須となります。
 

●定員・締切
20名 (申込締切は、12月22日(水)まで)
当選・落選は、12月25日(土)頃、連絡予定です。

 
先生プロフィール:
安藤 諭(あんどう さとし)
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1961年 滋賀県彦根市生まれ。88年 五日市の栗原呉服店四代目を継ぐ。03年 築百三十年の店舗の2階をギャラリーに1階奥をカフェに改装し「きれ屋」を開店。地域の職人や商店主の話を聞く会「衣食十二夜」や音楽会、落語会などを開く。05年 呉服屋が昔から扱っていた「てぬぐい」に注目しきれ屋オリジナルてぬぐい15柄を発表。現在企業や、商店、個人のてぬぐいの作成をお手伝いしています。
きれ屋 http://www.kireya.com/

先生プロフィール:
中村幸代(なかむら さちよ)
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1971年生まれ。千葉・習志野市在住。
WEBデザインを中心にグラフィックデザインなども手掛けています。富士通デザインセンターにてWEBデザイン、情報端末のインターフェイスなどを担当。転職後、ソフトバンクコンテンツ事業部にてWEBアートディレクターを経て独立。美しい伝統工芸に惹かれ、手ぬぐいのデザインはライフワークとして年に数回新作を発表。また、クリエーターと新しい手ぬぐいプロジェクト「てぬコレ」を立ち上げる。
ガランデザイン  http://www.garandesign.com/sachiyo/
TSUBAME  http://www.tsubame-shop.com/
てぬコレ  http://www.tenukore.com/

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